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 政府が政府なら、官僚も官僚

 

 民主党政権下の税制改正は極めて分かりづらい経過をたどった。とくに23年度改正は国税通則法の全面改正という内容を含んでいながら腰砕けとなり、雇用促進の政策税制拡充、寄附金税制拡充、年金所得の申告不要制度創設、租税罰則の強化、証券優遇税制の延長といった限られた項目を「整備法」として切り離し、23630日に公布となった。

 閣議決定されたそれ以外の項目は「構築法」として継続審議となっていたが、その政府提案法律を修正し、法人税率の引き下げなど、これまた一部だけを1130日に成立させ122日に公布した。修正の中身は削除という扱いであり、削除されたものは今後の改正の中で取り上げるということとした。

 

 国民・納税者にとって身近で大きな問題である税制改正が、一体どうなっているのか、政府税調・財務省・国税庁の情報提供は極めて不親切である。特に23年度税制改正について財務省のHPでの国民向け情報提供は、当初の改正大綱だけを取り上げているため、国民は誤ってしまう。何がどう成立して、何がなくなったのか、そしていつからどう適用になるのか分かりやすく情報提供すべきだ。

 仮に財務官僚たちが消費税増税路線を成就させるために、民主党政権のダッチロールを利用しようとしているのなら、公務員にあるまじき行為だ。そうでないなら、いかにもお役所仕事としかいいようがない。

 

 年末調整を経て、年が明ければ確定申告である。

 22年度改正も含めて注意したいポイントを確認しよう。税金対策と生活設計をするための参考にしていただきたい。

 

 ○個人所得課税

 ・年少扶養控除廃止(22年度成立、15歳以下は扶養控除なし)

 ・特定扶養控除縮減(22年度成立、高校生は対象から外れた)

 ・成年扶養控除縮減(23年度提案されたが削除された=先送り)

 ・給与所得控除の上限設定(23年度見送り24年度で再提出)

 ・法人役員等の勤続5年以下の退職金課税強化(23年度見送り24年度で再提出)

 ・還付申告の提出期間拡大(23年度成立、23年分の確定申告から適用、11日から還付申告書を提出できる)

 ・年金所得者の確定申告不要制度(23年度成立、2511日以後支払年金から)

 ・白色申告者にも記帳義務(23年度成立、251月から適用)

 ・住宅借入金等特別控除の拡充(24年度改正で新設。認定省エネ住宅は最高限度現行3,000万円が4,000千万円に。24年に居住分。10年で最大控除額が100万円増えて400万円となる。)

 ○資産課税

 ・相続税の基礎控除の引き下げ・最高税率引き上げ(23年度提案されたが削除=先送り)

 ・贈与税の税率緩和、精算課税の対象拡大(23年度提案されたが削除=先送り)

 ・住宅資金等に係る贈与税の非課税枠拡充延長(24年度新提案)

対象の住宅

平成24

平成25

平成26

省エネ・耐震住宅

1,500万円

1,200万円

1,000万円

一般枠

1,000万円

700万円

500万円

 ・相続税の連帯納付義務を緩和(24年度新提案)

 ○消費税

 ・免税事業者制度の見直し(23年度成立、2511日以後開始年・年度から適用)

 ・仕入税額控除95%ルールの見直し(23年度成立、2441日以後開始課税期間から適用)

 ○源泉所得税

 ・源泉徴収義務者に対して書類7年保存を法制化(24年度新提案、給与所得者等から提出してもらう扶養控除申告書や保険料控除申告書等の保存を、2511日以後提出分から適用)

 ○税務調査関係

 ・納税者権利憲章制定(23年度提案されたが削除された=永遠の?先送り)

 ・帳簿の提示・提出、留置き=罰則付き(23年度成立、ツマミ食いで調査強化)

 

 税務調査関係では、民主党政権は租税罰則強化や帳簿保存、記帳義務強化など、税務署にとって都合のよい改正を矢継ぎ早に行っている。この諸施策は、連合傘下の労働組合「国税労組」が長年主張してきた内容であり、納税者権利憲章制定見送りの策動を行ったのもこの「国税労組」だと名指しされている(税経通信201112月号、山本守之氏論文)。

 要は税務職員が自分に都合のよい要求を民主党政権で次々に現実化させているというわけだ。公僕である税務職員がかくも政治的課題で動いてよいのか?国家公務員法違反に当たると思うのだが、当局が動いている様子はない。

 

 民主党政権下の税制・税務行政の改革は、公約違反もさることながら、実に不透明で怪しい。

 

 追加>

 20111229日、民主党は消費税引き上げについて、20144月に8%、201510月に10%とする法案を提出するとした。引上げ自体が大問題なのに加えて、世の中の取引実態なんかまるで念頭にない無茶な引上げ日程。レジやソフトウェア会社はほくそ笑んでいるかもしれないが、業者はこれだけでもたまったものではない。