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3つの神話とは 
 
① 所得税の総合課税はできない。
② 法人税の増税はできない。
③ 消費税が上がれば社会保障も充実する。
 
 復興増税、社会保障と税の一体改革と、税金をめぐる動きが激しさを増している。
 が、何といっても政府が狙うのは消費税の引き上げである。野田首相は2010年代半ばには消費税の税率を10%に引き上げると国際公約した。
 これは財界の強い要求でもある。
 2015年度には消費税を10%にするとしているが、一気に倍にすると影響が大きいので、段階的に引き上げ、まず2013年頃に消費税を2~3%引き上げて7~8%とし、2015年度に追加引き上げで10%にする計画である。
 
 そのために、周到な宣伝が展開されている。
 社会保障の財源が、国自体の財源が破綻して、ギリシャのようになる。そうならないために、増税が必要である。だが、……
① 高額所得者にとって超減税になっている利子・配当や株の譲渡などの金融所得や不労所得を総合課税すると投資が鈍り経済上良くないし、また、執行に金がかかりすぎるので、総合課税はできない。
② 法人税を増税すると、税金の安い外国の会社との単価競争に負けて日本の企業は沈没する。それを避けるために日本の企業は海外に逃避して、日本が空洞化し、失業も増える。法人税の増税などとんでもない。逆に韓国や中国並みに引き下げるべきだ。
③ 社会保障を充実するためには、確実に税収増に結び付く消費税を増税して安定財源を確保する以外にない。消費税増税は社会保障充実に直結する。
 
 原発の安全神話が、科学的根拠もなく展開されたように、作為的に作り出されている3つの神話も根拠がなく、実態はウソが塗り込まれている。
 所得税の総合課税はやる気の問題であり、高額所得者の納税が増えても投資全体が大きな影響を受けるわけではない。
 株式市場だけに限っていえば、平成22年度の株式保有比率は下表のようになっている。

区分
保有比率
個人
20%
金融機関
30%
事業法人
22%
外国企業等
28%

       (野村資本市場研究所調べ)
 
 また、個人投資家の8割以上が年収1千万円に満たない人という調査結果がある(野村総合研究所調べ)。とすれば、高額所得者の株式保有割合は全体の4%ということになる。この人たちが投資を半減させても、影響は2%でしかないということだ。いうまでもないが、高額所得者の資金運用は3分法といわれていて、現預金、有価証券、不動産に等しく配分する傾向をもつが、ゼロ金利や不動産市場の低迷を受けていきおい投資に対する割合が高まっている。納税額が増えれば、それを取り戻そうと逆に投資に向かうと思われる。
 要は、こういった具体的な数字や投資傾向を全く明らかにもせず、高額所得者への増税は日本の投資市場を危うくすると宣伝しているのだ。
 
 日本の法人税は、租税特別措置や税額控除で大企業の実効税率は十分に国際的水準になっている。消費税増税が社会保障充実になる保障は全くない。支給年齢の後倒し、給付額引き下げを行う方向で検討しているのだから、とんでもない話だ。後で見るように、消費税は庶民増税であり、むしろ生活を破壊するのだから、社会保障の充実と結びつけるのはイカサマに等しい。
 
 さて、政府の狙いどおりに消費税が引き上げられたら、消費者である国民の負担はどうなるのだろうか。
 人事院は23年4月の1ヶ月の標準生計費を公表している。その支出をもとに消費税を単純計算すると、各世帯別の負担増加額が明らかになる(下表)。
 
【費目別・世帯人員別標準生計費と消費税】 (単位:円)

世帯人員
費目
1人
2人
3人
4人
5人
食料品
25,250
32,730
43,540
54,360
65,170
住居関係費
51,870
57,250
51,360
45,480
39,590
被服・履物費
4,010
5,430
7,270
9,120
10,960
雑費Ⅰ
26,590
44,620
62,690
80,750
98,810
雑費Ⅱ
9,670
29,310
32,070
34,810
37,560
117,390
169,340
196,930
224,520
252,090
 
 
 
 
 
 
消費税5%月額
5,590
8,063
9,377
10,691
12,004
上記年額
67,080
96,756
112,524
128,292
144,048
 
 
 
 
 
 
消費税10%月額
10,671
15,394
17,902
20,410
22,917
上記年額
128,052
184,728
214,824
244,920
275,004
 
 
 
 
 
 
負担増加額
60,972
87,972
102,300
116,628
130,956

 
 表を別の角度から見れば、消費税5%なら、12ヶ月と20日前後の収入で生活を維持することになり、消費税10%なら13ヶ月と5日前後の収入でやっと生計を維持できるということになる。要は収入の1ヶ月分以上が消費税の払いにもっていかれるわけだ。
 働けど働けど……石川啄木の歌が現実となって国民にのしかかってくる。神話に騙されてはいけない。