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 <提言> いまやるべきことは、確実な安定と活力創出

 大震災の影響は測り知れません。被災者のみなさんが安心して生活し、将来に希望をもてるよう、国と自治体の果たすべき役割も過去に経験がない規模で構築していかなければならないでしょう。
 復興のための事業はある意味ですべて公共性を有することになります。
 だとすれば、今回の震災や人災で生産手段や仕事を奪われた方々の中で働ける人は、国または自治体がすべて臨時職の公務員として採用し、給与を支給するとともに、復興という公共事業に従事させることを提言します。
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 物資配送、片付け、建築、医療、教育など人が生活していく上で必要なあらゆるノウハウ・専門性を持っている民間の人々の知恵と行動が、ひとつの組織として機能することになり、活力も生まれます。
 避難者は19万人、うち半数が就業年代として10万人、農業・漁業・自営業者・中小企業等で再開めどや仕事が途絶えた人が10万人として、企業が採用を見送った人などを含めても約20万人と見積ってもいいでしょう。
 1人当たりの人件費を500万円として、1兆円の財源が必要となりますが、そのほかに当座の復興費用数兆円ふくめて、財源は十分に確保できます。

 大企業・大金持ち優遇税制
   大胆に見直して財源確保を

 23年度税制改正の目玉として打ち出した法人税率5%引き下げで、1兆5千億円の減収となるとはじきだしたのは他ならぬ財務省です。これをやめれば1兆5千億円が確保されます。菅首相肝いりの目玉政策ですが、さすがにこの大盤振る舞いはやめようという動きになってきました。
 大企業に関していえば、平成14年度改正で導入された連結納税制度は大企業中心に約1,000社が利用していますが、この制度の最大メリットは連結法人間で所得通算できることです。これにより、毎年8,000億円が減収になっています。
 連結納税制度を廃止すれば毎年8,000億円の増収となるのです。
 大企業中心の租税特別措置のなかでも、数社しか該当しない特別措置が数多くあります。これなどは、特定企業に対する補助金と同じです。民主党政権も特別措置の効果について調査する制度を導入しましたが、効果を検証するまでもない特別措置は即時に廃止すべきです。
 中央大学名誉教授・商学博士の富岡幸雄氏は、朝日新聞(2011.1.19付)「私の視点」で「巨額の代替財源見逃すな」と題し、受取配当益金不算入制度による課税逃れに課税すると、法人税だけで8兆3,700億円が増収でき、巨大企業だけに絞っても受取配当益金不算入制度不適用によって2兆円が増収になると指摘しています。
 受取配当益金不算入制度は、法人の所得は最終的にすべて個人の所得に還流されるという虚構に基づく制度であり、この廃止は金融資金による利益、いわば余禄への課税ですから、企業本体への影響も少ないのです。逆にこの8兆円で日本を立て直し、消費と経済循環を図った方が企業にとってもプラスなのです。全廃して8兆円の財源を確保すべきです。
 これだけでも10兆円強です。
 大金持ち優遇も数多くありますが、とりわけ金融所得課税の軽減や非課税制度が問題です。
 上場株式の配当所得と譲渡所得に対する税率が10%(所得税7%、個人住民税3%)と軽減されています。要は株式の売買でいくら儲けようと税率10%でおしまいというわけですから、累進税率が適用される大金持ちの資金運用には手厚い優遇措置といえます。
 企業の資金調達要請や証券業界の要請に応える政策税制ですが、金融所得を総合課税としても資金運用が他に向かう要素は少ないのですから、経済界が心配することはありません。

 根本思想の転換を
 新自由主義から決別せよ

 なぜこういった大企業優遇、大金持ち優遇が税制の中に持ち込まれているのでしょうか。それは、「トリクルダウン理論」という新自由主義のイカサマ理論によっているのです。
 大企業や富裕層の富が増せば、しずくが下に落ちてきて下々も潤うという理論がトリクルダウン理論です。
 人員削減、下請単価切り下げなど、最近の大企業の行動を見ればすぐわかるように、この理論はとっくに破たんしています。個々の企業は競争の中で内部資金の充実に走り、下へは富を配分しないのです。また富裕層は自己の資産を増加させるだけです。
 小泉政権下で吹き荒れた新自由主義に基づく社会破壊。民主党政権も新自由主義に基づく政策に走り、小さな政府へ突き進んでいます。この政策では日本自体が再生しないのです。
 新自由主義から決別して、いまこそ「大きな政府」をつくり、国民一体で困難に対処していくことが必要です。みたように、その財源は十分に手当てできるのです。