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日本経団連は、経済産業省と共同歩調で菅首相に法人税率引下げを要望したが、代替財源が手当てできないという状況下で満額回答は到底無理と考えていた。ところが、日本経団連もびっくりの満額回答となった。
なんのことはない。本当の理由は、権力亡者の菅首相が、権力にしがみついていられる基盤をつくるためだといわれている。日本経団連の支持と支援を民主党政権に取り付けたいという下心丸見えのバーゲンセールというわけだ。
大企業に対する減税政策がもたらす影響も考えず、党利と保身のために打ち出した法人税減税。では百歩譲って、菅首相がもっともらしく上げた理由が成り立つのだろうか。
雇用創出は5・6万人だけ
第一生命経済研究所が試算
第一生命経済研究所は、仮に23年度税制改正が法案どおり成立し、法人税の実効税率が5%引き下げられた場合、減税されなかった場合に比べて、大企業の経常利益は3年後に1・7%程度増加し、それによる雇用者は5万6千人増加するとしたリポートを発表した。
一方、経済産業省は減税のよるGDP押し上げ効果を3年後で14兆4千億円と試算しているが、第一生命経済研究所は3年後で3兆円程度とした。実に4・8倍もサバを読んでいるのだ。
では、研究所の試算どおりに雇用が増加するだろうか。
引き下げの理由付けにあげた雇用の増加を実現すべく、菅首相は日本経団連会長に税率引き下げで得られる資金を雇用に充ててほしいと要請したが、会長は資本の論理をあげ、けんもほろろに袖にしている。ようは、儲けのあてもない雇用の増加を企業は行わない、義理や人情で人を雇うことはないということである。
つまり、まったくあてはないのだ。
財政悪化の加速と消費税引上げ
その結果は経済のさらなる冷え込み
財務省は法人税減税に冷ややかだという。財政悪化が目に見えているのだから当然である。その対策は消費税引上げしかないが、政権が二つ三つ吹っ飛ぶ覚悟がいるなど、事は簡単でない。
消費税引上げが延びれば、財政悪化が一層深刻化する。仮に消費税引上げが実現したらしたで消費不況が起きることは必然となり、税収が伸びない。伸びないどころか、社会不安が増して、泥沼の日本経済となる公算が大きい。「失われた10年」といわれたが、そんなことでは済まなくなるのだ。
どちらの政策をとるにせよ、大企業向けの法人税減税が及ぼす負の遺産が重くのしかかる。菅首相の保身減税政策が日本を危機に導くということを認識し、国会議員は賢明な判断をしてほしい。