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   消費税 その陰湿な歴史・現在地・今後

 4月1日は消費税が施行された「記念日」である。
 いまから33年前、1989年(平成元年)4月1日に消費税は施行された。
 この機に、消費税の歴史と現在地と今後を簡単に押さえておくことにしよう。
 というのも、国民や中小事業者は消費税という「占領政策」のもとにあるといえるからだ。

 日本の消費税は前段階税額控除方式の大型間接税で、欧州で始められた付加価値税と租税構造は一緒である。本来、付加価値税というべき税制である。
 施行日の10年前、1979年1月19日に大平内閣が付加価値税と同じ大型間接税として「一般消費税」の創設を閣議決定した。
 この決定に対して、国民や事業者の反発が大きく、政権が持たない事態が生じて創設はとん挫し、大型間接税の創設は表面上消えた。
 
 しかし、創設を狙う大蔵省は雌伏して「売上税」を準備し、中曽根政権は1987年2月24日「売上税法案」を国会に提出した。インボイス方式で年4回の申告というもので、欧州の付加価値税とほぼ同じものであった。
 この法案も強い反対にあい、一度も審議されることなく廃案になった。大型間接税創設は中曽根政権から竹下政権に引き継がれた。

 1987年11月6日に発足した竹下政権は売上税の失敗を教訓に、「小さく生んで大きく育てる」というジワジワ浸透作戦を取ることにした。
 侵略戦争における「宣撫工作」と同じ作戦である。
 支配者は時の権力者である。支配されるのは、税で収奪される国民である。
 竹下内閣は1988年7月「消費税法案」を閣議決定して提出。
 1988年12月24日、自民、公明、民社の3党協調による強行採決で法案は成立。
 とんでもないクリスマスプレゼントが国民に届けられ、翌1989年4月1日からの施行となった。

 同時に直ちに「宣撫工作」が開始されたのである。
 「宣撫工作」とは………軍事用語であるが
 「宣」は広く知らせること、「撫」はなでることで
 侵略戦争において、占領地で軍政を敷くときに占領された住民が敵対行動に走らず、協力的態度をとるように仕向ける工作をさす。よき支配者の顔をして、住民へ様々なまやかしの援助や施しを行い、住民の反発を懐柔し、占領を安定させ侵略戦争の目的を完成させるために行われる工作、それが「宣撫工作」である。
 いってみれば、政権や財界・大金持ちは占領者、国民・労働者は占領地の住民である。占領者は自分たちの税金を引き下げて利益を得たい、その付は占領地の住民、すなわち下層国民からの収奪で賄おうという占領政策である。
 その住民からの収奪の柱として創設したのが消費税であるから、消費税に敵対的な行動をとられたら収奪は安定せず、大企業・大金持ち優遇という占領目的を果たせない。
 竹下政権は国民や中小零細業者が猛反発しない程度の税率と、インボイスを避けて帳簿方式とし、免税事業が排除されないような仕組みを用意して創設を強行した。

    いまは「宣撫工作」のただなか

 創設時の税率3%から始まり、30年かけてジワジワと10%まで税率を引き上げてきた。  
 仕上げは欧州型付加価値税(インボイス方式)であるが、その完成はまだ先である。
 まだ「宣撫工作」のただなかにある。

 現在地は、「区分記載請求書」というインボイス一歩手前のナデナデ工作期間中にある。軽減税率の算定についても、中小事業者向けに売上税額特例と仕入税額控除特例が「工作」されたが、仕入税額控除特例は2020年9月30日をもって終了し、売上税額特例があと2年半ほど使えることになっている。もっともこの二つの特例は、中小事業者に確実に有利になる代物ではなく、まさに絵に描いた餅をぶら下げられただけの感がある。

    今後は?

 さて今後はというと、今年の10月からインボイス発行に向けて、番号を与えるための登録申請が始まる。免税事業者は登録できないから、取引から排除される可能性が大きい。そこで2029年9月30日までは免税事業者からの仕入れについても控除できる「宣撫工作」が行われることになっている。まだ8年強も先の話であるが、その終了をもってインボイス方式の日本型付加価値税が一応完成する。一応というのは、帳簿方式や簡易課税制度がいまのままだと残るからだ。

 とはいえ、1979年の大平「一般消費税」からなんと50年後の2029年に付加価値税を一応完成させるというのだ。
 強い毒を持ち、国民を苦しめる税であることがはっきりしている税制であるからこそ、かような長期間と「宣撫工作」が必要なのである。逆に言えば、収奪するための執念をここに見ることができるであろう。
 このような税が基幹税制で良いのか。4月1日の「消費税施行記念日」に考えてみようではないか。