注目されていた税制改正
令和3年度の税制改正案には実にがっかりさせられる。
いま、国民の中には大変な窮地に直面している人達がたくさんいる。その人たちに対する安心できる政策を大胆に確立することが求められているのだが、GOTOにこだわったり、まったく関係ない事業をコロナ関連だとして無駄遣してもチェックすらしないのが現政権が行なっている政策の実態だ。
政策を裏付ける財政をいかに確保するのかも重大な政策の一環であり、そこでも大胆な税制改革により国民が安心できる財政的基盤をつくる必要がある。
コロナ感染が急増しているさなかに出された自公政権の令和3年度税制改正大綱は、それゆえに注目されていた。
しかし、大綱は真逆の改正を打ち出した。
お金持ちは拍手喝采している
アベノミクスによるインフレ増進政策のため市中にバラまいた現金は、株や金融商品の投資・投機に向かい、経済停滞下で異常な株高を招いている。窮地に直面している人達にはまったく回らず、投資家たちを潤わすばかりだ。
それだけにとどまらない。令和3年度税制改正大綱で打ち出された内容をみると、投資家たちに「我らが春」をさらに謳歌してくれと応援しているからだ。金持ちたちは、金で金を増やす体制を税制面で手当てしてくれたので、ヤッホー大歓迎と拍手喝采しているに違いない。
日本を国際金融センターにする
改正の大きな柱として、「国際金融都市に向けた税制上の措置」を打ち出した。
シンガポールや香港のような金融都市をつくり、海外からの事業者や人材、資金を呼び込みたい、そのために次の税制上の措置を行うとした。
打ち出された時期が、香港が中国の抑圧で闘争と混乱に陥り、金融関係者や外国人が敬遠し始めた時期と重なる。漁夫の利を得るかのようなさもしさ丸出しである。
① 法人税
非上場会社の役員は、現行では業績連動給与をとれない。そのような支給をすれば損金不算入となる。投資運用会社の役員は業績連動給与が大勢であるから、非上場の会社や海外の会社は法人税の負担となる。それでは「優秀なファンドマネージャー」を日本に呼べない。そこで、若干の要件を付けるが、投資運用業については非上場の非同族会社等の役員に対する業績連動給与については損金算入を認めることにする。
② 相続税
「高度外国人材」の日本での就労を促進する観点から、日本に居住する外国人に係る相続税は国内財産だけに限ることにする。現行は、国外財産も含めて課税されているが、これを対象にしないというのだ。
③ 所得税
「優秀なファンドマネージャー」が出資持ち分を有するファンド(匿名組合)から受ける分配のうち出資割合を超えるものは総合課税とせず、株式譲渡益課税として分離課税で行うこととする。本来、分配はそれを受ける事業者の事業所得となり累進税率の適用となるが、それを20%の課税に抑えるというわけだ。
まさに至れり尽くせりである。
博打推奨国家に成り下がり
これが何を意味するのか、この際はっきり言っておきたい。
国民を博打(投資・投機)に向かわせるため、その胴元となる「優秀なファンドマネージャー」を海外から呼び集める。そして、国民がため込んでいる資金を博打(投資・投機)につぎ込ませ、いかにも経済が活性化したようにしようというのである。
国がこのようなバカなことをやろうとしている。
いま、令和3年度の税制改正が国会で審議されているが、この問題が審議されている様子もない。
この国はおかしくなる一方だ。