複雑な税率区分
10月1日があとひと月後になった。10月1日から、消費税率が10%となり、飲食料品の譲渡は8%の税率となる。いわゆる複数税率が施行される。安倍政権は3度目の延期は行わないようだ。
輸出はゼロ税率なので、消費税導入時から実は複数税率であった。3%と0%、5%と0%、8%と0%という具合である。
それが10月1日からは、標準税率の10%、軽減税率の8%、旧税率の8%、5%、3%、0%と、場合によっては6つの税率が適用となる事業者も出てくる。加えて、非課税と対象外があるので、取引は8つのどれに該当するのかを区分しなければならない。
大方の事業者はそこまでの税率区分は対象とならないであろうが、標準税率10%、軽減税率8%、旧税率8%の3つの税率プラス非課税・対象外は絡むことになる。
基本的には、この5つを正確に区分しなければ、正しい消費税額は算出できない。
税法を熟知している経理担当者がいるなら別だが、そのような経理担当者を置くことができないのが中小事業者の実態である。政府もそれは知っているらしく、こうした区分が困難な事業者向けに複数税率導入に対して、時限的措置として「中小事業者特例」を設けた。
中小業者に特例
この特例は3つある。
① 課税売上で軽減税率対象と標準税率対象の区分が困難な事業者向けに、課税売上に一定の割合をかけて軽減税率対象売上高とすることができる「売上税額の計算に関する特例」(R1.10.1から4年間)
② 卸・小売事業者に限ってだが仕入を区分することが困難な事業者向けに、売上特例の逆パターンとして「仕入税額の計算に関する特例」(R1.10.1から1年間)
③ 簡易課税にすれば仕入の区分が必要ないことから、簡易課税選択届を課税期間内に出せば、その課税期間から簡易で申告していいよという「簡易選択後出し特例」(R1.10.1~R2.9.30までの日の属する課税期間の末日までに提出。すでにR1.7.1以後に届出書の提出を認めている。)
ここで問題なのは、例えば①の「売上特例」では「10営業日基準」「仕入割合基準」「50%基準」の3つの基準が用意され、使い方によっては消費税の納税額にかなり極端な有利不利が生じることだ。
恣意的な割合を容認
納税額 大幅減
それは「10営業日基準」を「利用する」と起きる。
事例でみればすぐわかる。
標準税率対象売上 10,000,000円(消費税額1,000,000円)
軽減税率対象売上 10,000,000円(消費税額800,000円)
合計 20,000,000円(消費税額1,800,000円)
の売上げ構成だとしよう。
「10営業日基準」では任意の連続した10日の標準税率売上と軽減税率売上の割合で軽減税率売上額を算定していいとなっている。
そうすると10連続日をみて、軽減税率対象売上90,000円、標準税率対象売上100,000円だった期間を「恣意的」に拾うなり、作り出すことができる。
そうすると、軽減税率売上割合は90,000÷100,000=0.9である。
その結果、合計売上20,000,000×0.9=18,000,000が軽減対象売上となる。
つまり、この事業者の売上げ構成は次のようにしていいよとなる。
標準税率対象売上 2,000,000円(消費税額200,000円)
軽減税率対象売上 18,000,000円(消費税額1,440,000円)
合計 20,000,000円(消費税額1,640,000円)
仕入税額は変わらないので、納税額は160,000円も減るのだ。
この特例は4年間も使える。まるで事業者にはこずるく立ち振る舞えば得するぞとそそのかし、国民には自分が負担した消費税が国庫に入らないことを知らせず、国会で問題になることもない。
こんなバカな政策税制があっていいのか。消費税はその本質で国民を愚弄する税制であるが、国民は消費税と本格的に向き合う必要がある。