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   30年度 査察調査の概要を発表

 6月17日、国税庁は平成30年度の査察調査の概要を発表した。
 査察は重点事案を、①消費税受還付事案、②無申告逋脱事案、③国際事案、④その他社会的波及効果が高い事案、の4つとしている。
 トップに挙げているのが、消費税受還付事案である。下記の告発件数の推移をみれば力の入れ具合が頷ける。

 <30年度=消費税受還付の査察告発件数の推移>                 

 平成2627282930年度
 受還付事案  告発件数56111216件
   内・未遂事案 告発件数 14208件
 受還付事案  不正還付額974167485401,909 百万円
   内・未遂事案 還付未遂額 7742701,522 百万円

 特に目を引くのは「消費税不正受還付未遂事件」である。
 消費税の不正還付に対する査察件数自体が増えているが、うち半数は未遂事案である。
 額でいえば、告発した還付額の総額19億9百万円のうち、約8割にあたる15億2千2百万円が未遂額となっている。
 どういうことかといえば、納税者が消費税の還付申告を提出した場合、税務署はその申告どおりにすぐ還付するのではなく、いったん「還付を保留」してその申告が間違いないか調査や電話照会などでチェックすることにしている。
 還付額が大きい場合は実地調査するとしており、税務署が調査することになる。
 その調査で不正還付申告だと判明したとしよう。その場合、まだ消費税の還付を受けていないため、悪質であっても犯則事件として告発はできなかった。
 そこで、平成23年に「消費税不正受還付未遂犯」を創設し、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはそれらの併科を科せることにした。
 査察は、「消費税受還付事案は、国庫金の詐取ともいえ悪質性が高い」としている。この租税犯を未遂の罰則適用も創設されたので徹底して摘発するぞとなってきたといえる。

   いくつかの事例

 発表された査察の概要ではいくつかの事例を紹介している。
 そのひとつとして、近年は訪日旅行者(インバウンド)の増加や輸出物品販売場が急増しており、輸出物品販売場を悪用して輸出免税を使った不正還付を受けようとした(未遂)者を告発したとしている。
 また、高級腕時計の架空仕入を計上し、それを香港に架空輸出したよう装い、不正に消費税の還付を受けようとした(未遂)事案も紹介している。
 これなどは、輸出で簡易国際郵便を使ったものと思われる。
 1品20万円を超えない場合、簡易国際郵便を使えばその送付書は自動的に輸出者の手許に残り、それが「輸出証明書」の代わりになるので、ごく簡単に「輸出免税」を受けることができることになる。
 消費税は輸出をゼロ税率(非課税ではなく免税)としており、その適用は「輸出証明書」の保存が要件となっているが、「輸出証明書」は通関業者を通すことや税関の検査などでチェックが入る。ところが簡易国際郵便は簡単に送れてしまうため誰でもできてやりやすい。
 課税当局も査察もそのことはよく知っているから、輸出免税による還付はとにかく注意しろとなるのは必然だ。

    今後の展開

 消費税がどうも10月から10%になりそうだ。仮になったとすれば、還付額も増える。
 消費税の不正還付を国庫金の詐取とみているのが査察である。消費税受還付事案にますます力を入れることになると思われる。あわせて、税務署の調査も消費税を中心に展開されていくことになろう。
 消費税の増税は、税務調査の重点も消費税にシフトすることに繋がることを関係者は受け止めるべきであろう。