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 4月23日、滞納相談センターの学習会が開催された。
 いま滞納相談センターに寄せられている相談の大半が、地方税当局による給与口座の差押である。
 給与は一定部分の差押が禁止されている。全額差押で裁判となり、鳥取県が負けた「鳥取県児童手当差押事件」(平成25年)以降、地方税当局も全額差押は控えるようになっている。しかし、生活費として10万円を残し残額をすべて差押える事例は後を絶たず、滞納者がそれでは生活できないと掛け合っても聞く耳を持たない地方税当局の頑迷な態度に困り果てて相談してきている件数が異常に多い。

 宮城県地方税滞納整理機構は、国保税を滞納していた63歳パート女性に対し、給与約8万円が振り込まれた銀行口座の預金(残高約9万円)を入金直後に差押えた。
 4月10日、国会で日本共産党宮本徹議員がこの差押を衆議院財務金融委員会で取り上げた。
 宮本議員が「徴収法76条で最低生活費の差押を禁止されているとの考え方に立てば、絶対にやってはならないこと」と質問したことに対し、答弁に立った国税庁と総務省役人は次のように回答した。

 国税庁・並木政府参考人
 「国税の滞納整理に当たっては、法令等を一律・形式的に適用するのではなく、滞納者個々の実情に即しつつ、適切に判断する。例えば、残高の少ない口座への給料の振り込みを待って、差押禁止額を含めて、いわば狙い撃ち的に差押え、具体的に入金された差押禁止額を使用できなくするような状況にすることは適切でないと考える。」

 総務省・稲岡政府参考人
 「例えば、残高の少ない預金口座への給与の振り込みを待って、差押禁止額を含めて狙い撃ち的に差押え、入金された差押禁止額が実際に使用できなくするような状況にすることは差し控えるべき。」

 滞納相談センターの会長で学習会の講師にあたった角谷税理士は、次のような場合で給与の入金口座を差押えられた場合の具体的対応策を述べた。宮本議員の質問とそれに対する国税庁と総務省の回答を全面的に活用するべきだという。
 ① 給与の振込を待ち構え、入金直後に預金の全額または禁止額を上回るような差押
 ② 入金直後の差押でなくても、差押直前の預金口座の残高に変化がなく、その後入金された金額が明らかに差押禁止額であると特定できるにも拘らず行った差押

 このような差押に対しては、判例で「不法・不当」とされていること。
 国税庁と総務省は「適切でない」「差し控えるべき」と回答しており、この回答も示しながら即解除を求めるべきだという。
 それでも解除に応じない場合は、審査請求、地方税であれば総務省への請願が有効だとしている。

 総務省の政府参考人が回答しているとおりの行政が行われていれば問題は起きないはずだが、地方税当局は「地方税滞納整理機構」をつくり滞納整理に血道をあげている。そうしたなかで、行き過ぎの差押が後を絶たない。
 最低生活が保障されることは国民の権利である。ぜひ活用して生活を守っていただきたい。