課税ありきの強引な判断で収益事業に
………<国税庁回答>…………………………………
原則、法人税法上の収益事業に該当し、法人税の納税義務があります。
(理由)
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスは、障害者に対して介護等の提供を行う対人サービスであり、医療保健面でのケアを必要とするのが通例であることから、このような特徴を有する障害福祉サービスは、原則として収益事業である「医療保健業」に該当します。
他方、個別の事業者のサービス内容から見て、実態として医療や保健といった要素がないサービスを提供しているようなケースがあったとしても、障害者総合支援法の下で、事業者と利用者との間で利用契約を締結し、利用者からそのサービスの対価を受領することになりますので、そうした契約関係等を踏まえれば「請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)」に該当します。
したがって、NPO法人が行う障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスは通常、医療保健業か請負業のいずれかに該当し、法人税の納税義務があります。
ただし、NPO法人が提供する障害福祉サービスが、実費弁償方式により行われるもので、あらかじめそのことについて税務署長の確認を受けた場合については、収益事業としないものとされ、また、その障害福祉サービスに従事する者の半数以上が身体障害者等であり、かつそのサービスが身体障害者等の生活の保護に寄与している場合については、収益事業に含まれないものとされますので(法令52二)、いずれかの場合に該当するときには法人税の納税義務はありません。
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この施設の職員(健常者)は15名。施設でお菓子作りをしている知的障害者は18名。
お菓子作りは製造業に該当し、収益事業となることに争いはないであろう。
そうすると従事者の半数以上が障害者であるから、お菓子作りは収益事業に含まれないことになる。
ところが審判所は施設の運営自体が請負業で、お菓子作りは請負業の付随事業であると判断。その上に立って、従事者の半数基準は満たしているが、「生活の保護に寄与している場合」に該当しないとした。
その理由は、補助金である国等の「給付金」2,853万円プラスお菓子などの売上919万円の合計額3,772万円が売上となるが、障害者の給与は合計261万円(単純計算で1人当たり年間145,000円)であり売上の6.9%しか配分しておらず、生活の保護に寄与していることにならないと棄却した。
そこで、改めて争う立場から直近30年度分について「更正の請求」提出を前提に、福山税務署に収益事業の該当性について判断を示すように求めた。
福山税務署が広島国税局の回答として伝達
そうすると、福山税務署から、(国税局の見解を受け)「検討の結果収益事業に非該当なので更正の請求を行ってください。」と教示されたのである。
非該当と明確にいい、更正の請求を認めるというわけだ。
これが事案の概要である。
事案の検証
そこで少し検証してみよう。
広島審判所の判断は、平成元年8月の審判所裁決と軌を合わせるものである。
その時の判断は、障害者の給与が利益比の10.3%と低率だから生活の保護に寄与していないとしたものだ。
この観点からこの事案を見ると、次のことがいえる。
この施設の主たる事業である就業支援としては、障害者によるお菓子作りである。お菓子の売上は919万円で材料代や諸経費を引いた残り=利益は261万円となった。そこでその全額261万円を障害者に分配したわけだ。
そうすると、製造業における配分は利益比100%である。
施設運営全体が請負業だとしても、税務署が認定した施設全体の所得は251万円であるから、利益比率は261÷251=103.9%となる。
いうまでもないが、お菓子の利益が261万円なのに最終利益は251万円ということはお菓子以外の利益は▲10万円となる。
かりに障害者への給与を支払わないとすれば施設の利益は261+251=512万円である。
その利益に対する障害者給与は261÷512=50.9%となる。
平成元年8月裁決と比較してみてもこの事案の利益比は十分に高く、審判所の判断は誤りとなる。
人数基準で非収益となる判断を後ろに追いやり、「生活の保護に寄与」を金額配分の率で判断し課税しようとすること自体に横暴さがある。
そもそも配分率だけで判断できるものではない。
給与は少額であっても、毎日施設に来て生きがいを持てる作業をすることが、障害者の生活の保護になっているのではないか。当局お得意の「総合的判断」こそこの事案に求められることであった。
税務行政が法に規定もされていない「寄与の度合」を勝手に判断してはならない。
広島国税局はそのことに思い至ったようだから、評価したい。
収益事業として申告している各施設は早急に更正の請求をして、法人税額の返還を受け、施設や事業の充実をしていただきたい。