二重課税?
いわゆる大企業の内部留保が400兆円を超え、内部留保に課税すべきと希望の党が公約に掲げたことから、にわかに議論が巻き起こっている。
麻生財務大臣は「内部留保は税金を払った後のお金で、二重課税になる」との認識を示した。
報道によれば、税務当局の財務省は、「前年に比べて内部留保が増加した部分について課税できないかといった頭の体操は、主税局を中心にこれまで何度もしてきた。ただ税制の原則上、二重課税に当たってしまうため、やはり課税することは難しいというのが今の結論」と幹部は明かしたという。
この財務省側の認識を覚えておいてほしい。
政治的ワリキリ
この議論は法人課税の本質にからむ問題で、理論的に整合性を持たせて答を得ようとすれば、百家争鳴でドツボにはまる。
筆者は、内部留保への課税は政治的ワリキリであり、「国難」を乗り切るためには課税すべきであると考える。
留保金課税はどうなの
麻生財務相や財務省幹部が「二重課税論」を振りかざして足踏みするのは陳腐である。というより、大企業の擁護丸出しで情けない。
というのも、法人税法第67条で規定する「特別同族会社の特別税率」は、被支配会社の留保金について二重課税する条文であり、現行税制で堂々と二重課税がまかり通っているからである。公開会社である大企業は対象にならず、中小企業だけが留保金について二重課税される制度である。
しかもこの規定は、追加的累進負担を要求している。
留保金が、年3千万円以下 税率10%
〃 年3千万円超、1億円以下 税率15%
〃 年1億円超 税率20%
あまりにもひどい中小企業いじめ税制との批判を受け、19年度改正で資本金1億円以下の中小法人は適用対象外とされた。
元をただせば
そもそもこの制度は、法人所得は最終的に配当として株主に帰属して課税が完結するので、法人所得に対して比例税率を設定すればよいという理屈により、法人を低率課税に留めることからきている。
その場合、非公開会社は配当をせず内部に資金を留保することが容易に選択できるから、結果として株主に所得は回らず課税が完結しないから同族会社の留保金については二重課税であっても課税しようという政治的判断である。
過去の例
また、バブル全盛の平成2年度においては「法人臨時特別税」が制定された。1990年に勃発した湾岸戦争支援のためである。これも政治的判断にほかならない。
震災に対する復興特別法人税も然り。
消費税はどうなの
消費税はどうであろうか。所得税は憲法の要請から課税最低限の線引きを行い、それはギリギリの生存費といってよいが、その以下の所得には課税しない。当然の話である。
しかし、消費税には課税最低限が措置されていない。消費税でも生活費非課税の複数税率設定はイギリスで行われているように、いくらでも措置できる。それを行わず憲法違反を犯す消費税が政治的ワリキリとして行われているのが現状である。
「国難突破特別法人税」 だろ~
安倍さんは、北朝鮮問題と少子高齢化が「国難」だとする。軍備増強はいただけないが、少子高齢化対策は重要だ。そのための財源も必要であろう。
その財源を消費税に求めれば、生活費非課税の憲法違反がさらに増大し、最悪の選択となる。
低い比例税率や賃上げ回避で超過利潤をあげているのが大企業である。それを具体的に認識できるのが右肩上がりで蓄積され続けている内部留保である。
大企業の擁護もいいが、「国難」に対しては政治的ワリキリが必要だ。
財務省は二重課税だとの理屈をこねるのであれば、留保金課税を廃止しなければ筋が通らない。
そのうえで、内部留保に課税するのではなく、大企業の超過利潤に対して「国難突破法人特別税」を措置することはすぐにもできるではないか。