公益法人に対する課税は戦後税制の一つの課題である。
シャウプ勧告を受けて、1950(S25)年に公益法人の収益事業課税制度が創設された。
続いて、1957年(S32)には人格のない社団等に対する収益課税の拡大がなされた。
しかし、現実の税務執行では必ずしも徹底した課税は行われていなかった。
このような状況に対してマスコミ、とくに週刊誌が宗教法人の無税を不公平税制の一つであるとして批判を展開した。
宗教法人に対する批判はそのまま公益法人等全体の問題として国会等でも取り上げられるに至った。
公益法人課税は、主として宗教法人が生み出したものだが、国税庁は「公益法人等の収益事業の執行基準の確立と管理体制の整備」を目的として、1981年(S56)11月20日に基本通達を改正した。現在の通達は大半がこの時のものである。
自・社・さ連立政権の提言
このあと、自民党一党支配が崩れ、連立政権の時代が来る。
そして、村山内閣の後を受けて第1次橋本内閣が発足する。この時、現在の公明党は新進党と言う党名であった。
この第1次橋本内閣は、自民・社会・さきがけの連立内閣である。
この内閣は「与党行政改革プロジェクトチーム」(座長・枝野)を立ち上げ、公益法人に対する課税問題で提言案をとりまとめ、1996(H8)年7月3日政府に提出した。
主だった内容はつぎのとおり。
● 著しく過大な内部留保(公益事業用の不動産・動産を除くが、引当金等の名義のいかんを問わない)は、公益法人に対する税の優遇との関係からも認めるべきではなく、1年間の公益事業への支出の2倍を超える内部留保は3年以内に是正させる。
● 公益法人が、特定の営利企業の出資総額の3分の1を超えた出資をすること(株式の取得を含む)を禁止し、現状でこれと矛盾する場合は、3年以内に是正させる。
● 公務員の俸給の額を基準として、役員の報酬や退職金(名義のいかんを問わない)がこの水準を上回ることのないよう指導し、高額の場合2年以内に是正する。
● 法人税法の見直しを早急に開始し、「原則課税とした上で、寄付金等非課税のケースを列挙する」との方法を含め検討する。
マスコミは、創価学会に対する揺さぶりと
この提言案に対してマスコミは、「創価学会揺さぶり狙う」と見出しを付け、次の解説を掲載している。
「与党行政改革プロジェクトチームの提言案は、宗教法人などを含む公益法人の優遇税制を原則撤廃するよう提唱した点が最大の目玉だ。その底流には新進党の有力支持基盤である創価学会の揺さぶりを狙う与党側の思惑が見え隠れする。
自民党などが、オウム真理教事件を契機に宗教法人課税の見直しを提唱。
その後、与党3党は学会の選挙運動に歯止めをかけようと、宗教と政治の関係を規定する新法制定も模索した。だが、議論の出口が見えなくなっていた。今回の提言案の背景には、次期衆院選まで学会揺さぶりの材料を絶やしたくない与党側の計算が見える。」
提言内容に基づく法律改正が行われた場合、宗教法人を含む公益法人の本体会計も収益事業会計も丸裸になる。
内部留保の是正が具体的にどのようなものか判断できないが、揺さぶりをかけられた創価学会にしてみれば大変な事態になると受け止め、なんとしても回避しなければならないと考えたことは想像に難くない。学会の有力支持政党のその後の政治権力に対する姿を見れば、自ずと答えが見えてくる。これも表と裏の関係と言えるだろう。
なんとも情けないことだが、税金は信条より重いということのようだ。
税金を道具にしてはならない
税金は集め方と使い方は政治そのものであるが、政治的圧力に課税権を使ってはいけない。政治を歪めてしまう。
もっとも、狙い撃ちで減免するのが租税特別措置法や特区であり、頻繁に行われていることは例をあげるまでもない。これは経済を歪めてしまう。
税金の賦課は、高い理念に基づいてやってほしいものだ。