税務調査が本格化している。
加算税制度の改正を受けて、調査手続が一つ加わった。
実地調査については「調査通知」が最初の入り口になる。この通知では、①実地の調査を行う旨、②調査の対象となる税目、③調査の対象となる期間の3項目が通知される。
①は定型句で、すべて同じ文言だから記録するまでもないが、②の税目と③の対象期間は記録する必要がある。
例えば、対象税目は法人税で、対象期間は27/3、28/3、29/3と通知された場合、この通知されたなかで27/3と29/3に計算誤りがあり、通知後、調査着手前に法人税と消費税の計4期分について自主修正した場合、29/3期の自主修正には5%の加算税が賦課されることになった。表にすると次のとおり。
新加算税の付加
法人税 | 消費税 | |
27/3 | なし | なし |
29/3 | 有 | なし |
理由は、まず消費税は通知されていないから更正予知前の自主修正となり、加算税は付加されない。
法人税は3年分通知されているが、改正は29年1月1日以降に法定納期限が到来する国税から適用されるので27/3は賦課できない。
この改正をよく理解して、自主修正に対応する必要がある。
今回の本題は源泉単独調査の法的根拠についてである。あわせて、支店等がある場合の源泉所得税の調査関係について述べる。
本店と支店が別々の税務署管内にあり、それぞれ給与支払がある場合、支店に対して、そこの管轄税務署が源泉所得税だけの調査を行うと通知してきた場合の法的関係を見ておきたい。
1 源泉徴収義務者の取り扱い
通則法第74の2条①は、「各号に定める者に質問し」と規定する。
一号で「所得税に関する調査 次に掲げる者」「イ 所得税の納税義務がある者」としている。この規定には「源泉徴収義務者」なる文言はない。したがって、質問検査権行使の対象にならないのではないかとの疑問が生じる。
しかし、単語としての規定はないが「所得税の納税義務がある者」には源泉徴収義務者も含まれる。
その理由は、所得税法第1篇第2章「納税義務」において第5条納税義務者、第6条源泉徴収義務者と規定しているので、「納税義務がある者」には第5条と第6条が含まれるという解釈である。
2 源泉所得税の納税地と管轄税務署
所得税法第17条で源泉所得税の納税地は 「支払の日における所在地」とされている。
そこの地で国家との債務は完了する。つまり、源泉所得税は支払地の支払者が源泉徴収義務者となり、そこの税務署が管轄税務署となる。
3 質問検査権行使の管轄
行政機関である税務署の管轄と所掌事務は、国家行政組織法、財務省設置法、財務省組織規則で決められている。
管轄は財務省組織規則第544条、所掌事務は同第545条で規定されているため、源泉所得税の納税地の管轄税務署が「内国税の賦課徴収」に関する業務を行うことになる。
行政機関は上から順に委任される形で地方支分部局が管轄を決めて設置され所掌事務ができる構造になっているため、管轄の超えた事務は組織法上できない。超えるためには特別に法的な措置がいる。
以上から、支店の管轄税務署の当該職員が通則法第74の2条の質問検査権を行使する。
仮に本店管轄税務署が法人本店の調査を行うに際して、対象税目に源泉所得税を通告しても、その対象となるのは本店が支払者でその地で納付した源泉所得税だけであり、別の管轄の支店が納付した源泉所得税の調査はできない。
実務では、本店所在地の税務署が共通するような非違をみとめたときは、支店の税務署宛に資料情報を流すだけである。
税務職員に間違いはないものと思うが、管轄を超えた調査が行われた場合は違法であるから、知っておく必要がある。