詐欺がはびこる社会
横浜市のマンションが傾いた。原因は基礎を支える杭が強固な岩盤に届いていないためだという。大変な重量の建物である。杭が岩盤に届いていないとなると、傾くのは当然であろう。
最初は地震のせいにしたが、調べてみると杭打ちを請け負った旭化成建材の担当者がデータを改竄していたという。
10月28日には北海道でも偽装が明らかになった。釧路市の道営住宅で杭打ちデータのすり替えが判明したという。横浜とは別の担当者だというから、すべてに疑いが広がるのはやむをえない。
これはいうなれば「詐欺」だ。東洋ゴム、東芝、フォルクスワーゲンも然り。
構造的問題
食品偽装もたくさんあった。
最近のこうした企業の事件に接すると、人が生きていく基本の衣食住が何とも心許ない社会になってしまった。
識者たちも「利益至上主義」による根本的な問題があると指摘し始めている。
建設業界に関しては構造的問題として、元請、下請、孫請、ひ孫請の在り方も取り上げられている。
税制の視点から見ると
ここからが今回の本題。
建設業界の下請構造は昔からあった問題だが、消費税が拍車をかけているといってよい。
日本の消費税は消費型付加価値税であり、消費財のみを課税ベースとするものである。
課税ベースは、「賃金+利子+地代+減価償却費+利潤-設備投資」に等しくなる。
この算式をよく吟味していただければ、消費税がもたらす社会的影響を思い描くことは容易だ。
消費税の納税額を少なくしようとすれば、最も簡単にできることは賃金を減らし、減価償却費を減らすことである。
つまり、雇用を減らし、機械などを処分して減価償却費を減らせばいいことになる。
だが、そのままでは利益を生まない。代替が必要となる。その代替が下請である。
下請に丸投げすれば、課税ベースは、「利子+地代+利潤」となる。
丸投げされた下請も同じことを考えるから、孫請けに丸投げする。孫請けも同じことを考えるからひ孫請けに丸投げする。
ひ孫請けは社員を独立させて一人親方とし、賃金を減らす。場合によっては派遣職人をつかう。
消費税こそ構造的問題の元凶
消費税は雇用破壊税といわれるが、消費税の課税ベースの算式からの連鎖で納得されるであろう。
こうして建設業界の無責任体制と非正規社員の増大を生み出している。
識者が構造的問題を取り上げるのはいいが、残念ながら消費税には及んでいない。税率が10%になればさらに拍車がかかるであろう。
人間が安心して生活できる社会を作るためには、消費税をやめることだ。