税理士会の例会で次の文書が配布された。全文をここに掲示するので一読してほしい。
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関東信越国税局
平成27年6月
文書照会等事務の集中処理部署の設置について
関東信越国税局では、法人課税関係事務等の一層の効率化を図ることを目的として、春日部税務署に文書照会等事務を集中的に処理する部署(以下「集中処理部署」といいます。)を設置し、関東信越国税局管内全63税務署所管の法人等に対する書面照会事務の一部及び埼玉県下の特定10税務署所管の法人のうち、稼働が見込まれる無申告法人に対する実態確認事務を集中し、実施することとしました。
なお、集中処理部署における事務の概要は次のとおりですので、ご理解とご協力をお願いします。
項 目 | 内 容 等 |
集中処理部署の名称等 | 名 称:春日部税務署 特別国税調査官(文書照会等担当) ※略称として「文書照会担当」といいます。 所在地:埼玉県春日部市大沼2丁目12番地1 春日部税務署 |
事務の内容 | 1 照会文書の発送 〇 照会文書を春日部税務署文書照会担当から発送します。 〇 照会文書に対する回答書の返信先は、春日部税務署文書照会担当となります。 2 照会文書の未回答者等に対する電話照会 春日部税務署文書照会担当から、文書による照会内容について電話により照会させていただく場合があります。 3 稼働無申告法人に対する実態確認 法人税等が無申告の法人で、事業活動が行われていると見込まれる法人に対して、その法人の稼働状況の現地確認及び法人事務所に臨場しての申告のしょうようを行います。 ※ 2及び3の事務については、行政指導の範囲で行うこととしていますが、事務の実施状況に応じ、所要の措置(質問検査権の付与)を講じることとしています。 |
対象税務署 | 〇 上記事務の内容1及び2 関東信越国税局管内全63税務署 〇 上記事務の内容3 川越、川口、西川口、浦和、大宮、所沢、春日部、上尾、越谷及び朝霞税務署の10税務署 |
開始時期 | 平成27年7月10日 |
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行政指導の規定
税務署では法人に対して「申告内容のお尋ね」文書等を発送して回答を求める行政を行ってきたが、これは行政指導として行われている。
税務調査ではない。
行政指導は、行政手続法が規定する行為で、定義と一般原則、方式について条文は次のように規定する。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
六 行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
(行政指導の一般原則)
第三十二条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
(行政指導の方式)
第三十五条 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
2 以下 略
何が問題か
まず定義の「行為」に違反しているのではないか。
たとえば、「申告をしていただいたが、誤りがないか確認していただき、所得や税額が増減する場合は修正するか更正の請求をしてください。」というようなものであれば、指導勧告助言となるが、お尋ね文書は書面による「質問検査権」の行使であるから、行政指導から逸脱する。
次に「所掌事務の範囲」に違反しているのではないか。
税務署は行政機関として所掌事務が定められていて、情報を収集することはできるが、その納税者に対しては所管する税務署長が責任者となる。管轄・所管が定められており、管轄外の税務署長が行政指導をしても責任関係はないから、行為に意味がない。意味がないということは「所掌事務の範囲」ではないということである。責任者の明示とはそれを裏付けをもって行うためである。
例えば川越税務署長を責任者とする文書照会を、春日部税務署の特官はできないのであり、場合によっては公務員の守秘義務違反の疑義も生じよう。
おそらく当局は、この担当特官を63署に併任発令し、すべての署に「席」があるとしてこの問題をクリアするであろう。しかし、そんなアリバイ作りは通用しない。
いわば架空の勤務実態であり、職務管理、職務命令はいったい誰が行うのか。税務署長は機関の長であり、職員管理や職務命令を行う任を持つから給与が支払われているのに、62署の署長がそれをやることは不可能であろう。そうすると署長は業務の任を果たしていないのに、不正に給与を受け取っていることにならないか。また、この担当特官の給与や旅費等の支払いも怪しいことになる。
こんな併任がまかり通るのであれば、グループ法人の出向や転籍など、税務上で取扱いが問題になることは一切なくなる。すべて併任発令すればいいということだから。この例からもわかるように、当局がやろうとしていることはすり抜けでしかない。
行政指導の趣旨、内容の明示に違反するのではないか。
お尋ね文書の回答次第、あるいは回答をしないことから、調査に転ずることを提示しているが、お尋ね文書に「その趣旨」つまり、「更正に結び付けるため」という趣旨が明示されるかどうかである。おそらくそのような文言はないであろう。
ズバリ言えば、調査の選定対象を絞り込むための文書照会であるが、それを隠して行政指導を行うというのであるから、これは行政手続法違反となろう。
国税通則法が改正され、調査件数が減少したことをカバーするために様々な施策を国税庁は展開しているが、行政指導を脱法的に使う行政はいただけない。