富裕層調査強化の一環?
国税庁は富裕層の調査強化をぶち上げている。応能負担原則を税務調査から見た場合、歓迎すべき行政方針である。まあ、遅きに失している感もあるが……。
税務署の個人課税部門では納税者を次のような区分で管理している(公開されている)。
「継続1管理事案」……不正常習など高額・悪質な納税者
「継続2管理事案」……大口資産家
このうち継続2の大口資産家については、管理している全部を対象に7年一巡で調査することとしていた。
ところが、大口資産家のサラリーマンもいて、その人を7年ごとに調査しても増差が出るわけではない。課税庁にしてみれば、非効率ということになる。
そこで昨年あたりから相続時の課税用に、「財産及び債務の明細書」を永年保存するとともに、調査の必要性が認められない人については、資料情報の継続的な収集・蓄積対象とする扱いに転換したとされている。
継続2管理事案をさらに区分
26年の開示された資料を見ると、継続2管理事案については、「調査に軸足を置く者」と「情報蓄積に軸足を置く者」という名称を付し、2つに区分して管理することを指示している。
「調査に軸足を置く者」は、資産の保有・運用状況のみならず、贈与事実を的確に把握するために調査し、2回目以降の接触については、調査結果の内容を踏まえて時期や接触対応を決定するとしている。つまり、7年一巡に拘らないということであろう。
なお、「調査に軸足を置く者」は「重点管理対象者」にも区分して管理するとしている。
「情報蓄積に軸足を置く者」については、資料情報の継続的な収集蓄積を行うとともに、「財産及び債務の明細書」及び「国外送金等調書」に係る文書照会を行い、保有資産の異動が確認され、調査が必要と認められた場合には調査により接触するとしている。
なお、2区分の分け方は、まず「情報蓄積に軸足を置く者」を基準に従って抜き出し、それ以外のものを「調査に軸足を置く者」にするとしている。
大口資産家として継続2管理事案とする基準や、そのうちの「情報蓄積に軸足を置く者」の基準は公表されていない。
公表すると悪いことをしたり、高をくくったりするという理由であろうが、隠すことはないと思う。むしろ、基準を公表して、税務署はあなたをこのように管理しており、調査となる頻度も高いよと認識させる方が余程効果的と思う。仮にそれによって資産を海外に移転させるなどすれば、「国外送金等調書」も整備され、思うつぼではないかと思うのだが。
国民総背番号制 …… 国税庁は「ラッキー」
大口資産家などとは縁遠いものには、税務署の納税者管理など気にする必要もないのだが、ところがどっこいの時代に突入する。
日本の国民は随分呑気に構えているが、28年1月から「国民総背番号制」が実施されることを視野において、課税庁は次のように表明している。
「平成28年からの番号制度導入による事務の一層の適正化・効率化効果に期待」
「番号制度を見据えた資料情報事務の充実」
大口資産家だけではなく、全国民の情報を税務署が容易に管理できる時代になるのである。