誰にとって「いい正月」 税金は取り方も使い方も政治そのものですが、暮れも押しせまった時に、憤りを覚える税金の使われ方が報道されました。 使い方の問題では、今月の「経済フラッシュ51」では政党助成金に焦点をあてて問題を指摘していますが、このコーナーでは昨年12月25日に安倍首相と仲井真沖縄県知事の会談で合意した沖縄振興予算3,850億円を考えることとします。 | シーサーは怒っているぞ! |
首相との会談を終えた仲井真知事は、「有史以来の予算だ。長年の基地に絡む性格の違う内容のものの解決をお願いしたら、早く取りかかっていただいて前に進み始めた実感がある。いい正月になるというのが実感だ」と報道陣に語り、結果、米軍普天間飛行場を沖縄県内の辺野古に移転することを承認しました。
いったい誰にとって「いい正月」になったのでしょうか。
沖縄振興予算の26年度概算要求は3,000億円でした。安倍首相はそれに850億円上積みするとしたのです。振興予算は「満額回答以上」で、仲井真知事は思わぬお年玉に「有史以来の予算」と舞い上がったようです。
金をドンと積んで、その代り危険物を預ってよという、安倍首相のアメとムチの政策にまんまと乗せられた感があります。歴史的汚点といえる事態です。
こうしたやり方は、原発の設置自治体に対する予算のバラマキと同じです。
「有史以来の予算」は大ウソ
各府県の予算は道路なら国交省、農地整備なら農水省といった具合に、各省庁の予算から執行されます。ですからその県に国の予算がいくら付いているのかは決算してみなければわからず、普通の県民はほとんど実額を知りません。
ところが、沖縄県は違うのです。
沖縄県は復興のときに沖縄開発庁という役所ができました。この沖縄開発庁が各省庁の予算も、市町村への予算も、県への予算も、すべて一括してとりまとめて沖縄に下ろす形にしています。沖縄振興策と銘打った予算を一本で執行しているので、総額がわかるのです。
平成10年、大田昌秀知事(革新)のときが最大で4,000億円ありました。その後、知事が保守に変わり、さらに小泉改革で全国的に地方財源が削減され、平成16年では2,000億円と半減したのです。
革新県政から保守県政になって沖縄県の財源は半減した、これが事実です。
保守陣営は、革新県政だと政府から予算が取れないと攻撃した手前、この事実を隠す意味で、政府に予算削減を追及せず、政治課題として取り上げずにきたのです。
「有史以来の予算」などと、すぐにわかるウソをついて、県内受入を県民に納得させようというのでしょうか。これでは、沖縄に基地を押し付ける政府のプロパガンダの片棒を担ぐものです。
沖縄県民のみなさん、日本から米軍基地をなくそうと思っているみなさん、騙されないでください。
経済効果は、基地さまさまですか?
米軍基地を受け入れていれば、経済効果があり、予算も付くので地域は潤うというのも事実は違います。
2011年4月に全国税制懇の研究集会を開催した沖縄・北谷町美浜は、米軍の滑走路でした。米軍基地だった時の経済効果は3.3億円と言われました。
返還され整備された今は、573億円を生む一大リゾート地になっています。実に173倍の経済効果をあげているのです。私たちがお邪魔した時も、季節外れにもかかわらず観光客が大勢いました。沖縄の人たちは返還された方が経済的にメリットがあることをわかり始めています。
安倍首相が提示した策は、振興予算以外はほぼ口約束の水準。普天間基地の早期返還には何も回答していません。朝日新聞の社説では「空手形」を出したくない気持ちがあるのだろうとしていますが、金で県民の意思をねじ伏せてしまうとしたら、沖縄の米軍基地は事実上恒久化してしまうことになりかねません。
フィリッピンから米軍が撤退したのは、フィリッピン国民の反米感情が高まり、アメリカが民意に敏感になったためだと言われています。
基地を返還させる確かな道は、沖縄県民の意思として、負担をどこにも肩代わりさせず、あくまで即時返還を表明し続けることです。この屈しない運動こそ、基地そのものを撤退させる確かな道です。
(沖縄開発庁や予算額、経済効果については、琉球新報社東京支社 報道部長 島 洋子さんの講演録「女性&運動」2013.12から引用しています。)
税金の使われ方で、何とも不快な正月を迎えました。とても「いい正月」とはいきません。
お金で躓いた都知事選挙の公示が今月予定され、2月9日投票となります。
お金に屈服する人、お金でだます人、お金に群がる人、お金をだまし取る人、財布だけではなく、政治までそれで歪んではいけません。税金の使われ方を納税者はしっかりチェックし、ものを言っていきましょう。