1 労働組合に必要な申告等
① 法人税(収益事業に課税、1000人未満の組合には課税しない*1983年国税庁回答、ただしこの回答が現在も適用されているかは未確認)
② 事業税(収益事業に課税)
③ 都道府県民税(収益事業に課税)
④ 消費税(課税売上高1000万円を超えた翌々年度に納税義務が生じる)
⑤ 源泉所得税(給与、報酬)
⑥ 預金利子・配当(法人格組合は金融機関への届出で非課税)
⑦ 収支計算書(全収入8千万を超える公益法人に提出義務*罰則規定なし)
⑧ 固定資産税(法人格組合所有の事務所倉庫には課税されない)
2 法人格を持つ労働組合かどうかで変わる税金
① 法人格を持つ労働組合 = 公益法人
② 法人格を持たない労働組合 = 人格なき社団
3 申告が必要な機関
本部・支部・分会など独自会計を持つ個々の機関が申告主体
本部(支部)が支部(分会)の決算等をまとめて行っている場合は統合して申告
3 収益事業の区分経理
① 労働組合の収入形態
収益事業収入 国保事務収入、労働保険報奨金収入、不動産賃貸収入
非収益事業収入 組合費収入、カンパ収入
混在事業収入 手数料収入、雑収入
② 必要な区分経理
一般会計と収益事業会計(特別会計)の区分経理(期末修正可)。
共用資産の減価償却費(帳簿価額)の按分経理
③ 費用の配賦基準
資産の使用割合 減価償却費、地代家賃、固定資産税
従業員従事割合 人件費、福利厚生費
収入金額割合 一般管理費
4 会計処理
発生主義、複式簿記の採用が望ましい。
5 税率
法人格組合 | 人格なき社団 | |
法人 課税所得800万以下 税率 800万超 | 15% 19% | 15% 25.5% |
復興特別法人税 | 法人税額×10% | |
道府県民税 | 法人税割5% 均等割20.000円 | |
市町村民税 | 法人税割12.3% 均等割50.000円 | |
法人事業税 地方特別税 | 年400万円以下2.7%、800万円以下4.0%、800万超5.3%法人事業税の81% |
6 労働組合の源泉徴収義務(納税地は支給事務所所在地)
源泉対象 | ||
非課税規定(通勤手当、旅費、宿日直料など) | × | 適用を受けるために一括支払はしない |
短期専従者給与(日当)、賃金カット補填金 | × | 雑所得(所得20万円以下申告不要)、医療費控除など確定申告すると申告義務発生 |
役員手当(専従手当) | ○ | 清算される行動費を除き、給与として源泉徴収対象、非専従の場合は乙欄扱い。 収益事業からの臨時給与や渡切高額行動費が損金にならない。 |
行動費 | ○ × | 渡切行動費は給与として源泉徴収対象 旅費(運賃、宿泊料、食事その他の雑費)=日当は社会通念上「適正なバランス」を組合規約の規定に設けて運用すれば非課税 |
動員手当等の日当 | × | 動員手当、大会日当は課税されない |
専従損失補償金 | × | 一時所得 |
弾圧犠牲者補償金 | × | 原則非課税、組合や雇用主からの退職金相当見舞金は一時所得 |
退職金・退職手当 | ○ | プロ専=会社及び組合退職時の二回に課税 |
弁護士等の報酬・料金 | ○ | 弁護士、税理士、芸能人など |
復興特別所得税 | ○ | 源泉所得税×2.1% |
7 法人税の申告
① 事業開始届出書提出=収益事業開始2ヵ月以内に所轄税務署
② 確定申告期限、納付期限=事業年度終了後2ヶ月以内
③ 確定申告書添付書類=貸借対照表、損益計算書
8 法人税損益計算書の提出(不提出への罰則規定はない)
① 対象は法人格組合(法人税確定申告書提出組合は除外)
② 提出 事業年度終了後4ヶ月以内
③ 年間収入8000万円以下の組合は除外(一般会計と特別会計を合算)
④ 除外収入 不動産売却収入、剰余金、各種取崩収入など実収入にならないもの。
9 労働組合の収益分配と解散分配金
労働組合構成員に所得税が課税される(収益の分配=雑所得、解散の分配=一時所得)
10 労働組合と消費税
① 原則
法人税=収益事業に課税、消費税は「資産の譲渡等の対価」に課税
② 消費税の納税義務者
法人税同様、「経済的に独立」している機関
③ 機関紙は不課税
組合員に対し業務の一環として配布される場合「資産の譲渡等」非該当
④ 会館建設時の建設費用など多額の消費税負担がある場合
課税事業者を選択すれば還付は可能であるが、二年間は免税事業者に戻れない。
⑤ 収入の区分
資産の譲渡等に該当
A 課税売上 事務手数料収入など
Y 免税売上 輸出収入
B 非課税売上 受取利子、土地貸付・売却収入
資産の譲渡等に非該当
C 特定収入 組合費、カンパ、交付金、補助金等
C1 課税仕入限定 ひも付き交付金など
C2 課税非課税共通 共通仕入限定収入
C3 C2 C3以外の収入 組合費収入
D 特定収入に該当しない収入 借入金、預り金、貸付回収金、前期繰越金
⑥ 特定収入割合により仕入控除額から調整額を差し引く計算がある。
労働組合は特定収入が多く、特定収入割合が5%以上となり、調整が必要。
⑦ 簡易課税について
前々年課税売上高5000万円以下の場合適用できるが、試算の上で採否を決定する。
⑧ 消費税増税
課税仕入計算 4/105 → 6.3/108 → 7.8/110