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   東京税財政研究センターが公開研究会を開催

 4月20日、東京税財政研究センターが主催する「公開研究会」が東京税理士会館で開催された。
 午前10時半から青山学院大学法学部・中村芳昭教授が「租税行政手続きの課題」をテーマに90分、午後1時から関西大学商学部教授・鶴田廣巳教授が「わが国の税・財政改革課題~アベノミクスに対抗して」をテーマに90分の講義を行った。
 42名の参加者は自分の日頃の研究成果の到達点を点検するとともに、新たな視点とアプローチを得ようと熱心に聞き入り、会場には静かな緊張感がみなぎった。

  講義の後、質問に答えるお二方の教授
 左・中村芳昭教授        右・鶴田廣巳教授
(青山学院大学法学部)     (関西大学商学部)
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 税金ウォッチのコーナーにつき、ここでは中村教授の講義ポイントをお知らせし、改正通則法で税務調査がこれまでと違う流れになるなかで、納税者の権利をどのように対置していくのかの一助にしてほしいと願う。

   戦前と180度転換した!

 中村教授は租税手続関係の特徴を、戦前はドイツの「権力関係説」をもとに租税手続が構築されていたと指摘する。課税庁に「特権」を与える性格を持ち、更正・決定権限を柱とし、その補助手段として質問検査権、自立執行権、租税債権の優越性が構築されていたという。
 しかし、戦後は申告納税制度が原則的方法として採用されているので、戦前とは180度転換したと指摘。この180度の転換により、課税庁の「特権」は租税債権確保措置として、どこまでどの程度それを認めるかは便宜的立法措置の問題であるという。
 ところが、課税庁は特権が認められることから、それをギリギリまで膨らませて職務を遂行する傾向が否めず、それが争いにもなってきた。
 そこで立法措置をどのように行うかの問題であるが、その場合、中村教授は法的構成の上に立って論ずるべきと指摘し、国税通則法第16条が重要条文となるという。

 申告納税方式について、通則法第16条1項1号は次のように規定。
「申告納税方式 納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長又は税関長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長又は税関長の処分により確定する方式をいう。」

 条文が規定していることを確認すると、納税すべき税額(納税義務または租税債務の両含み)は納税者の申告という手続により「確定」する。これが原則。
 次に、3点の場合に限って「税務署長の処分により確定する」。
 3点は、①申告がない場合、②納税者の税額計算が法律の規定に従っていなかった場合、③課税庁の調査したところと異なる場合、である。
 そこで、原則は納税者、続いて課税庁の処分を経て最終確定と読めそうだが、法律に基づいて成立し客観的に存在する納税額が、納税者または課税庁の行為によって常に正しく確定されるとは限らないという前提に立ち、納税者の申告による「確定」も、税務署長の処分のよる「確定」も、あくまでも一応の確定にとどまるとしているところがこの条文のミソである。この条文は一応の確定にとどまることしか規定していないから、後になって取消し・変更される場合がありうる。

    講義を受けて

 中村教授の講義を聞いて、なるほどと膝を打った。
 そもそもが課税庁の処分を絶対視していないのである。
 処分の後は不服申し立ての世界に入り込むことになるが、処分に至る流れとして、当局には特権を与えるが、そこで納税者に法律的対等性を持たせることが眼目になることを暗に含みとして示していると解釈できるのだ。
 納税額は原則納税者の申告による。その法律適用が違うあるいは調査したところと違うと課税庁が認定する場合、当然に税法解釈と適用に対しては納税者の見解が対置されることも前提となり、そこに納税者と課税庁の対等性を担保する手続が法的にも要請されるわけである。
 このように考えると、25年1月1日から適用となった改正通則法はその改正趣旨=納税者に透明性、予見可能性を高めること、課税庁の説明責任を強めること=を踏まえて運用されなければならないことがいよいよはっきりする。
 戦前と180度転換した申告納税制度が本来予定している納税者と課税庁の法的対等性が、納税額の一応の確定をめぐって前進するのか、課税庁の特権の膨張遂行を許すのかが問われるということである。

 税理士としては、納税者の権利擁護のために改正通則法を活用しきることが使命になる。
 よく勉強したいものだ。