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    固定資産税の流れ

 会計事務所にとっては、年末調整の事務と合わせて固定資産税の「償却資産申告書」を作成・提出(1月31日期限)する忙しい時期である。
 土地家屋については、地方税法第382条によって、登記所から自動的に情報が地方税当局に流れるため、それに基づいて賦課決定することになる。
 念のため、条文を掲載したので確認していただきたい。
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地方税法
(登記所からの通知及びこれに基づく土地課税台帳又は家屋課税台帳への記載)
第三百八十二条
 登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたときは、十日以内に、その旨を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知しなければならない。
2  前項の規定は、所有権、質権若しくは百年より長い存続期間の定めのある地上権の登記又はこれらの登記の抹消、これらの権利の登記名義人の氏名若しくは名称若しくは住所についての変更の登記若しくは更正の登記若しくは百年より長い存続期間を百年より短い存続期間に変更する地上権の変更の登記をした場合に準用する。ただし、登記簿の表題部に記録した所有者のために所有権の保存の登記をした場合又は当該登記を抹消した場合は、この限りでない。
3  市町村長は、前二項の規定による登記所からの通知を受けた場合においては、遅滞なく、当該土地又は家屋についての異動を土地課税台帳又は家屋課税台帳に記載(当該土地課税台帳又は家屋課税台帳の備付けが第三百八十条第二項の規定により電磁的記録の備付けをもって行われている場合にあっては、記録。以下本項において同じ。)をし、又はこれに記載をされた事項を訂正しなければならない。
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   思わぬ時に 5年分の追徴が……

 償却資産については、登記が絡まないため、納税者自らが「申告」しなければ、基本的に地方税当局が課税客体を把握できない。
 そんなこともあって、「償却資産申告書」の提出が過不足なく積極的に行われているかといえば、むしろ心許ない状況ではないかというのが正直なところであろう。
 なお、「償却資産申告書」とはいっても、この申告で税額が自動的に確定するものではなく、「こんな資産を持っています」という程度のものである。納税者が提出したこの「課税資料」の提出を受けて、地方税当局がその資産の価額と税額を決定して賦課決定することになる。

 その原因や責任はだれにあるのかということもはっきりさせず、国の財政は火の車だから消費税を増税するというとんでもない動きになっているが、地方自治体の財政も東京以外は切羽詰まっている。
 各自治体は少しでも財政を好転させようと、あの手この手で税収増を図っているが、大きな財源である固定資産税の、とりわけ償却資産に対する課税強化が進んでいる。
 説明したように、納税者の自主的な資料提供まちでしか課税の糸口がない償却資産の固定資産税だが、法人税や所得税は減価償却費が損金や必要経費になる関係から、法人税・所得税の申告書には償却資産が表示されることになる。
 これをチェックすることができれば、地方税当局にすれば課税客体となる償却資産を幅広く把握できる。
 この要望を受けて、地方税法が改正され、次の条文が追加された。
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地方税法
(所得税又は法人税に関する書類の閲覧等)
第三百五十四条の二
 市町村長が固定資産税の賦課徴収について、政府に対し、固定資産税の納税義務者で所得税若しくは法人税の納税義務があるものが政府に提出した申告書若しくは修正申告書又は政府が当該納税義務者の所得税若しくは法人税に係る課税標準若しくは税額についてした更正若しくは決定に関する書類を閲覧し、又は記録することを請求した場合には、政府は、関係書類を市町村長又はその指定する職員に閲覧させ、又は記録させるものとする。この場合において、政府が行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律第四条第一項 の規定により同項 に規定する電子情報処理組織を使用して当該関係書類を閲覧させ、又は記録させるときは、情報通信の技術の利用における安全性及び信頼性を確保するために必要な基準として総務省令で定める基準に従って行うものとする。
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 改正前までは法定化されていなかったため、自治体が償却資産を把握する手段は乏しかったが、改正を受けて積極的に国税の申告書をチェックし、償却資産の固定資産税課税を広げている。
 ある会社は、市の納税課から電話が入り、「法人税の減価償却の別表を拝見すると、これこれが固定資産税の対象になると思われますので、検討のうえ回答してください。」と指摘され、結局5年遡って結構な額の固定資産税を支払うことになった。

 三税協力といって、国税と地方税の当局間で情報のやり取りが広がっている。大半は通達や協議によって取り決めをしているのだが、こうした改正による法的お墨付きも整いつつある。たかが地方税と高をくくっていると、思わぬ落とし穴に嵌ることになるので注意したい。