26年1月1日からスタート 非課税口座開設の申請は25年10月1日から
長年にわたり財界とりわけ金融・証券業界から「貯蓄から投資」への誘導策をとるように迫られ、政府は次々と金融証券税制をいじり、投資誘導策を税制面からとってきた。
そのひとつが10%の軽減税率や譲渡損失の損益通算や繰越であったわけだが、原則の20%に戻すと上場株式に投資する人が減る。そこで並行して導入するのがNISAである。
ISAとは、Individual(個人の) Savings Accounts(貯蓄口座)の略である。
1996年、イギリスで毎年7,200ポンド(約154万円)までの投資への配当・譲渡益等を非課税とする個人貯蓄口座制度(ISA)を導入した。
これを日本(Nippon)版として導入するのでNISA(ニーサ)というわけである。
何ともチグハグな命名であるが、毎年100万円の枠で5年間、総額500万円までの累積投資額を非課税口座で管理し、管理されている上場株式等に係る配当・譲渡益に対しては所得税・住民税を課税しないという制度である。
この非課税口座の開設申請手続きが25年10月1日から開始される。
宣伝が喧しくなるわけだ。驚くのは、国税庁のホームページもその宣伝の一翼を担っているかのごとき内容になっていることだ(国税庁HPから)。
非課税口座を設定して、500万円まで投資を煽っているに等しい。
だが、注意が必要だ。非課税口座で管理されている上場株式の譲渡損は「ないもの」とみなされて、損益通算も繰越もできない。
譲渡益や配当を非課税にするエサで、国民を総投資家にしむけ、財界や金融証券業界は資金が流れ込んでウハウハだが、株は水物である。資金の流入で一時は株が値上がりするであろうが、消費税増税による消費不況は目に見えており、株の値下がりが当然に予想される。相当数の国民が損失を抱えることになり、消費不況に拍車をかけることになる。
一方、少し目端が利く人なら、値上がりしそうな企業を嗅ぎわけるだろう。当然、特定の企業に集中する。だから、日本の上場企業全体に資金が行き渡ることはない。
合成の誤謬という事態をNISAは招きかねないのだ。このような税制を導入してはいけないし、ましてや行政機関が煽るようなまねはいけない。