安倍ブレーンが提案
6月3日、社会保障制度改革国民会議で、安倍ブレーンの伊藤元重・東大教授から「死亡消費税の導入」が提案された。 (社会保障制度改革国民会議がいかに問題のある法律の下で設置されたのかは、当HPトピックス33号2012.7.1付をぜひご覧ください) | 草葉の陰で…… |
「相続税と誤解していただきたくないんですけれど、亡くなられた段階で消費税をいただくというもの。60歳で停年されて、85歳でお亡くなりになられるまでに、一生懸命、消費して、日本の景気に貢献された方は、消費税を払ってお亡くなりになっておられる。
しかし、60歳から85歳まで、お使いにならないでひたすら溜め込んだ方は、消費税を払わないでお亡くなりになられて、しかもそれが、相当な金額にならない限りは、遺産相続の対象にならない。ですから、生前にお支払いにならなかった消費税を、少しいただく。それを、後期高齢者の方の医療費に使わせていただくというものです。」(「第13回社会保障制度改革国民会議」より。 2013/06/03)
おふざけの冗談ではなくて、伊藤元重東大教授は大まじめだ。相続税がかからない人も対象にするといっているのだから、国民全員に、死んだときに残した財産に一定の税率で消費税をかけるという新税構想を得意気に開陳したわけである。
バカらしくてまじめに付き合うのもバカというものだが、この教授が言うところに沿えば、この税金は「消費しなかった罰金税」ということになる。
残った財産は、所得税を納税した後の所得によるものだから、課税済みなのだが、そんなことは関係ないというわけだ。
そうすると、消費をしたかしなかったかの責任は「死んだ人」にあるのだから、その課税要件を作った張本人が課税主体にならなければ税金の基本に反する。当然、納税義務者は「死んだ人」である。
仮に「死亡消費税法」で相続人を納税義務者だと規定したとしよう。課税要件はあくまで消費をしなかったということにあるのだから、納税主体が違うと違憲訴訟を起こすことになる。そんな訴訟を起こすと、この教授なら、国家反逆罪を適用すべきと主張するかもしれないが、最高裁が納税義務者は「死んだ人」だと判決を下すことになる。
これで「死亡消費税法」が成立したとしよう。
「死んだ人」は申告書をかけないので、「死亡消費税」を創設しても申告する人はだれもいない。当然無申告になる。そうすると、期限後申告を勧奨することもできないので、どうしても税務署が調査のうえで決定することになる。
つまり、「死亡消費税」は申告納税方式を採用することができず、賦課決定する税金となる。
残した財産に消費税率をかけるのだから、死亡した国民全員の財産調査が必要になる。
そこで、借金はどうなるかといえば、それは関係ない。借金であれ何であれ、原資は関係ないのだ。消費をせずに1円でも財産を残したということは、1円を消費せずに消費税を免れたというのが伊藤教授の力説するところなのだから。
時間の無駄遣いを反省。
ただ、ひと言いっておきたい。安倍首相の政治姿勢は、明らかな意図をもって愚にもないことを平気でやり、国民の目をそらすという手法をとっている。
ブレーンのひとりがこれを持ち出すことで、所得税の応能負担の強化、高価なものに税率を高く設定する個別消費税への転換など、本来やるべき税制改革を隠してしまう意図が見え見えということである。
財源不足をあおり、際限ない消費税引上げに誘導しようという意図も見え見え。
為政者に騙されてはいけない。