税務職員のマジな話
課税事業者が消費税の納税申告をする場合、日本は「請求書等保存方式」という方法によっている。この方式、別名を帳簿保存方式といって、ザックリいえば課税売上も課税仕入も帳簿に記載した税込金額を割り返して納税額を算出する方式である。
日本人は取引を几帳面に帳簿に記載するから、これでOKなわけだ。
複数税率になろうが、インボイスを導入しようが、基本的にこの方式を継続することになっている。税率の違いがあっても課税、非課税、対象外、8%対象を帳簿上できちんと処理できれば、何の問題もなく正しい消費税額が算出されるのだ。
現に、いまでも5%、8%、非課税、対象外を区分けして正しい税額を算定しているのだから、軽減税率が導入されたからといって問題なくできる。
だから、仮に今年10月に10%になってもこれまでと基本的に同じような請求書等保存方式で4年間もやることになっている。裏を返せば、それでやれるということだ。
政府の理由は、ためにする理由だということをまず押さえていただきたい。
軽減税率導入で1兆円減る?
別の財源で穴埋めは、詐欺話
昨年暮、政府は消費税増税時に軽減税率を導入することで見込まれる税収目減り分約1兆円の財源確保策を発表した。
それが上の図表だ。JIJI.COMから転載させていただいた。
そもそも食料品を軽減税率にする理由は、低所得者に配慮するためだ。元の税率を据え置くのであるから、1兆円は国の財政が増えないだけである。歳出も見合いで増やさなければ、それでことは済んでしまう話である。
ところが借金の穴埋めを狙うため、1兆円を大衆増税と社会保障費の削減で確保するとした。
これでは、低所得者に別の負担を強いることになり、軽減税率導入は詭弁としかいえないことになる。まさに詐欺に等しい。
インボイス導入の狙いは
ずばり増税のため
ここで図をよく見てほしい。政府はインボイス導入で、2,000億円の増収を見込んでいる。
現在500万事業者が免税事業者である。なお、この数字は財務省の推計値で、統計に載らない事業者をカウントすれば、1千万事業者にのぼるのではないかといわれている。
インボイスは課税事業者しか発行できないので、これらの事業者はインボイスを発行できない。これため、事業者間取引から排除されることになる。
そのため、廃業するか、課税事業者を選択せざるを得なくなる。
免税事業者が課税事業者を選択すれば、必然的に消費税を納税することになる。
仮に免税事業者のうち200万事業者が課税事業者を選択し、1事業者が10万円の消費税を新たに納税することになれば、2,000億円である。それが毎年税収として確保されるのだから、政府にとってインボイス方式は打ち出の小づちで、すでに算盤をはじいている。
消費税増税反対の声が日増しに大きくなっている。ところが2%引上げばかりに目がいって、とんでもない増税策と社会保障の切捨てが余り問題になっていない。
とんでもない詐欺話を許してはならない。