デンマーク 袖にする
トランプさんに世界が引っ掻き回されているが、今度は死語になりつつあるが日本の地上げ屋も真っ青になる話が駆け巡っている。
報道によれば、トランプ大統領は8月18日、記者団に対して「アメリカにとって戦略的に興味深い」「大きな不動産取引になる」と述べ、グリーンランドの購入構想があることを認めた。これに対して、デンマークのフレデリクセン首相は「ばかげている」とけんもほろろに突き放した。その言葉遣いが気に障ったらしく、トランプ大統領は「むかつく」とのべ、9月に予定していたデンマーク訪問を延期するというのだから、逆にいえばそれほどまでに買い取る意思が強かったといえる。
領土の切り取り
別の国の領土を買い取るという発想がそもそも驚くのだが、しかし考えてみれば戦争という力ずくの手段で領土を拡大することを人類は繰り返してきた。
日本の戦国時代などはまさに領土を切り取れと合戦に明け暮れた歴史があるし、クリミア半島や尖閣諸島などの実効支配などはまさに力による領土の切り取り以外の何物でもない。
では、不動産取引としてお金で領土を手に入れるというのなら、平和的でいいではないかとなるのかである。
強欲哲学
要は欲しいものを手に入れるという強欲哲学が底流にあって、その手段が金でほっぺたを叩くか、力ずくでも手に入れるかの違いにすぎない。
地上げ屋の常套手段は、まずは金で立ち退かせ、金でいうことを聞かなければ嫌がらせや脅しをかけ、それでも応じなければ暴力行為に及んで手に入れるというものであった。
グリーンランドの買い上げ報道に接し、トランプ氏のこれまでの動きや発想をみると、一時問題となった地上げ屋に結びついてしまうのは、穿ちすぎだろうか。
一匹目の泥鰌
ところで、ネット情報によれば、グリーンランドの購入計画はトランプ政権が初ではなく、第二次世界大戦直後の1946年にも、当時のトルーマン大統領が1億ドルでの購入を提案したが、デンマークに断られた歴史があるという。
また、アメリカはロシアからアラスカを買っている。これもネット情報だが、クリミア戦争の財政難などの理由による資金調達のため、ロシアは1867年にクリミア戦争の中立国であったアメリカ合衆国に720万ドル(1km2あたり5ドル)でアラスカを売却した。
この交渉をまとめたのはアメリカの国務長官であったウィリアム・H・スワードである。このことは当時のアメリカ国民から「スワードの愚行」「巨大な冷蔵庫を買った男」などと非難されたが、その後豊富な資源が見つかったり、アラスカが(主に旧ソ連に対する)国防上重要な役割を果たすことが分かり、現在では高く評価されているという。
二匹目の泥鰌
グリーンランドも資源が豊富に眠っているそうだ。また、中国が戦略的な地勢上の抑えを含めて、すでにグリーンランドに相当の金をつぎ込んで影響力を築きつつあるという。そんな世界情勢をみると、アメリカはアラスカを買って資源と戦略的価値をタダ同然で手に入れたわけだが、「柳の下の二匹目の泥鰌」を手に入れようと思っているようだ。
この日本のことわざ、柳の下にいつも泥鰌がいるとは限らない。一度うまくいったからといって、同じやり方で何度もうまくいくとは限らないという意味である。
トランプさんに通じるかどうか。