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ドラマ作りはワンパターン 
 
 小林念侍さん演じる肩のこらない税務調査官もののテレビドラマが時々放映されているが、少し前に、NHKが「チェイス~国税査察官」で税務調査をテーマにした骨太のドラマを放映して話題を呼んだ。査察調査のドキュメントではないので後半はNHKのドラマらしい展開ではあったが、査察調査の一端を描いた。
 この秋、テレビ番組改編で、税金をめぐるドラマが相次いで放映されている。
 米倉涼子さん主演の「ナサケの女~国税局査察官~」と篠原涼子さん主演の「黄金の豚-会計検査庁特別調査課-」である。
 「ナサケの女」で米倉涼子が演じるのは、東京国税局・査察部・情報部門査察官。情報の情でナサケというわけだが、内偵ともいう。かたや、「黄金の豚」で篠原涼子が演じるのは、会計検査院の調査官らしい。「黄金の豚」は設定自体が「会計検査庁」とデフォルメ(変形)されているが、公務員相手に税金の使い道を調べるのだから「会計検査院」ということになる。
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 まだ1、2回しか見ていないなかでの感想だが、組織のしがらみや優柔不断で動きの遅い男たちに対して、原則を貫くカッコイイ女主人公が決め台詞で一件落着させる勧善懲悪ドラマといったところだし、ちょっとありえない漫画的展開。
 査察官が令状、調査官は電卓をかざして悪を観念させるところなどは、正直なところ、水戸黄門の印籠、遠山の金さんの桜吹雪そのままで、失笑してしまう。
 
 調査方針や公務員攻撃の応援キャンペーン?
 格差拡大への無策から目をそらす世論誘導?
 
 警察もののサスペンスは相変わらず本数も多く人気も高いようだが、にわかに税金を巡る調査官ものが放映されるのはなぜかと勘ぐってしまう。
 国税庁の今事務年度の調査方針が、「特に留意する事項」(いわゆる特留事項)として税務職員に指示されている。目玉は、「富裕層に対する調査強化」と「無申告者に対する調査強化」である。個人、法人、資産課税共通で取組み、富裕層の財産も税務署が押さえ、やがてくるであろう相続税にも引き継ぐという。また、無申告者に対しては特別の部署を設けて追い詰めていくという。
 この方針が出された背景として、不況と格差拡大により低所得者が格段に増加しており、このような時、税務署が富裕層や申告をしていない者への甘い対応で課税を見逃していると、税務署が社会的に糾弾されることになるためだ、と幹部の説明があったという。
 一方、民主党などの公務員たたき、事業仕分けによる税金無駄遣い糾弾キャンペーンがすさまじい。公務員はすっかり悪者扱いである。
 こんな中で、低所得者層の足の引っ張り合いが起きているという社会学者の指摘もあるが、足の引っ張り合いは確実に政府・財界・マスコミによって仕組まれてきたためだ。
 その目で、取り上げた二つのテレビドラマを見ると、税務署の調査方針と政府の公務員たたきプラス税金無駄遣い追及の応援キャンペーン番組と見える。
 富裕層に切り込む税務署や悪者公務員をやっつける会計検査院を過大に見せ、不満をそらさせる世論誘導で、格差社会を作った政府・財界の政策や、その解消をはかろうとしない政府・財界の動きから目先をそらされてはならない。
 
 勘違いは困ります
 
 査察事案ではない一般調査で、調査に来た国税調査官のなかに、自分は社会正義の実現者との認識を示し、任意調査なのになんでもできるかのように振る舞う人がいる。
 テレビによる世論誘導はよく仕組まれ、その効果は大きいだけに、国税調査官にも影響を与えるだろう。勘違いしないようにしていただきたいものだ。