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   表の顔 

 安倍さんはいま開催中の国会を「働き方改革」国会と位置付け、「働き方改革」関連法案を提出し、何としても成立させるとしている。
 この法案はそもそもどのような趣旨で提案されたのか。
 それは、2015年2月13日に厚生労働省の労働政策審議会が出した「建議」に基づく。
 その建議では、喫緊の課題として、「長時間労働を抑制し、仕事と生活の調和のとれた働き方を拡げていく」とぶちあげ、「長時間労働の抑制」と「仕事と生活の調和」という角度で労働法制を見直すとしたことにある。
 これが「働き方改革」法案の大前提である。
 これに反するような法案を提案すれば、根本から違う話になる。
 安倍さんもそこは分かっている。 はずだ。

   裏の顔

 ところが関連法案の中に、「裁量労働制」なるものの導入がある。
 これは財界がかねてから要望していた働らかせ方で、それなりの立場の社員(=労働者)は成果(ノルマ)さえあげてくれれば、自分の裁量で労働時間も場所も自由にやっていいよという働らかせ方。
 その代り、使用者は定額の給与を払えばよくて、あとはその社員が何時間残業しても休日を潰して働いても、残業代や休日出勤手当は払わなくていいというもの。
 それを法律でできると決めるのだから、社員からは一切文句はいえないし、残業代不払いで裁判に訴えることもできなくなる。
 これは使用者にとってみれば、成果は保障されるは、賃金は定額さえ払えばいいのだから、まさに天国に違いない。
 この財界の強い強い裏の顔が関連法案に張り付いている。

   ノルマも裁量なら、最良だが…

 仕事の成果(ノルマ)も社員の裁量で決められるのなら、定額の支払いが保証されるのだから、長時間労働の削減につながる可能性がある。労働者にとっては最良といえる。
 ただし、会社にとっては、成果は上がらないは、給与は支払わなければならないはで、倒産に追い込まれかねない。
 だから、ノルマが社員の裁量になることはない。しかもノルマが低く設定されることはない。これは断言できる。
 当然、裁量労働制に組み込まれた社員がノルマ達成のために長時間労働、休日返上に自分を追い込むことは火を見るより明らかだ。
 だから、この裁量労働制の導入法案は何回も潰されてきた。

   デマゴーグ

 デマゴーグとは、煽動政治家のことである。
 ウィキペディアでは、次のようにいっているのでここに引用する。
 「古代ギリシアの煽動的民衆指導者のこと。英語ではdemagogueであり、rabble-rouser(大衆扇動者)とも呼ばれ民主主義社会に於いて社会経済的に低い階層の民衆の感情、恐れ、偏見、無知に訴える事により権力を得かつ政治的目的を達成しようとする政治的指導者を言う。デマゴーグは普通、国家的危機に際し慎重な考えや行いに反対し、代わりに至急かつ暴力的な対応を提唱し穏健派や思慮を求める政敵を弱腰と非難する。デマゴーグは古代アテネの時代より民主主義社会に度々現れ、民主主義の基本・原理的な弱点、則ち究極的な権限は民衆にありその中でより大きな割合を占める人々の共通の願望や恐れに答えさえすれば(それらがどの様なものでも)政治的権力を得られるという点を利用した。」
 この解説を読めば読むほど、安倍さんをデマゴーグと分類しても外れてはいないと思う。

   1日の超勤時間45時間

 大衆を煽動するために、偏見に訴える。裁量労働制は長時間労働を招くというのは「偏見だ」というわけだ。
 偏見を論破するために、安倍さんは、裁量労働制の方が一般労働者より勤務時間が短いというデータがあると訴えた。
 そのデータは厚労省が労働政策審議会に提出したもの。
 このデータでは、一般労働者の1日の超過勤務時間が45時間という回答をそのまま使って平均残業時間を算定していたことが分かった。
 データの誤りは2月25日現在365件に及ぶというのだから驚く。誇り高い日本の官僚は普通ならそんな誤りを見過ごすはずはない。
 何度も廃案になった焦りか、データを故意に作り上げたというのが本筋ではないだろうか。
 さすがの安倍さんもゴリ押しすることができなかった。しかし、安倍さんが誤って済む話ではない。裁量労働制が長時間労働にならないという根拠が出鱈目となったのだから、法案の出直しが当然だ。
 しかし、安倍一強の下では何でもできると思っている安倍さんは、法案提出と成立を目指すという。

  安倍さんは何でも裁量で…

 そんな振る舞いを見ていると、安倍さんは自分自身が裁量労働制で働いていると思っているのではないか。この人の場合、政治ノルマが自分の裁量でどうにでもなると思っているのではないかということだ。
 政治家は憲法という大枠を踏まえ、国民を憲法にそって導くことだが、安倍さんは憲法も何もあったものではない。安倍さんの裁量で、日本はいよいよおかしなことになっている。