アメリカメジャーリーグから二人の日本人投手が日本のプロ野球に復帰した。
広島東洋カープの黒田投手と、福岡ソフトバンクホークスの松坂投手である。
黒田投手は古巣のカープに「帰ってきた」、松坂投手は古巣の西武ではなくソフトバンクに「移籍した」。
黒田投手については、帰国時のコメントがカープの公式サイトに全文がアップされている。故郷に帰ってきた、故郷を守りたい、金じゃないという思いが伝わってくる。
松坂投手については、ソフトバンクの公式サイトに何のコメントもない。他のサイトで日本復帰を語っているが、野球する場所を日本球団に求めたという感じである。
同じ復帰でも中身が違っていて、ある感慨に囚われた。
プロ野球選手も一種のサラリーマンで、感覚は普通のサラリーマンと同じだなあという感慨である。
サラリーマンとして社会人になり、最初に働く場所に就いたとき、その勤務地は「第二の故郷」ともいえる場所となる。社会人として産声を上げた場であるし、同時に仕事に矜持を培う最初の場になるのだから、その場に居合わせた上司や同僚と連帯感を持ち、仕事を立派にやり遂げたいと思う気持ちも育つ。
日本語を赤ちゃんが自然と身に付けるように、職場の言葉を自然と身に付け、所作も身に付け始める。育てられるのだ。
それは自分の体質になっていく。だから、故郷は帰るべき場所となる。守りたいしそこに帰れば自分を取り戻す。
1カ所に勤務するサラリーマンもいるだろうし、転勤族もいるだろう。
仕事に矜持を見出し得ない人もいるだろう。いろんな人がいると思うが、どのような仕事であれ、自分の仕事に矜持を持てない人は、自分で努力することも、経験を積み重ねることもできず、結局仕事で居場所を定めることができず、帰る場所もない、ということになるのではないだろうか。
雇用形態や労働時間の問題が、資本の論理と政治によって悪い方悪い方に引きずり込まれている。これは間違っている。明らかに悪政で、多くの働く人たちの気持ちを萎えさせ、日本を悪くしている。働く人たちが、仕事上の故郷を持てなくなっている。
二人の投手の日本復帰をみて、特に黒田投手の故郷意識と矜持に触れて、考えさせられた。