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  自民安倍さんが回避 あら? 民主岡田さんも回避

 26日に開会された通常国会の冒頭で、安倍晋三首相は所信表明演説を行わなかった。
 朝日新聞によれば、最大野党の民主党が要求しなかったためで、異例と報じた。
 相撲にたとえれば、国会という春場所が始まり、初日に東の正横綱と西の横綱が土俵には上がったが、見合いもせずに土俵を両者が下りてしまったことになる。
 観客からは罵声と座布団が投げつけられるだろう。
 普通であれば、安倍首相が国会冒頭で所信表明演説を行い、それに対して代表質問が行われるはずであった。政権側は、施政方針演説をやるのでいいという立場。

  極めて重要な国会
  しっかりチェック
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 国会は論戦の場である。その代表的な論戦が、所信表明演説や施政方針演説に対して行われ、国民に首相や政府のやろうとしていることが明らかになる。民主主義を保障する基本的な仕組みといえるだろう。

   二つの演説の違い

 所信表明演説は首相の政治姿勢を表明するもの。
 施政方針演説は政府の施政方針を表明するもの。
 似ているようだが、まったく違う。
 所信表明演説は、首班に指名された首相が日本という国をどのような方向にもっていくのかの決意表明である。
 施政方針演説は、それを具体化した政府の政策を予算の裏付けをもって説明するもので、所信表明演説がすべて網羅されているわけではなく、具体化する政策に限られる。

   曲がり角になりかねない重要国会

 安倍さんは解釈改憲で集団的自衛権行使を閣議決定した。今度の国会は、それを法律化するというのだから、戦後日本が憲法のもとで歩んできた道を大転換するものとなる。
 イスラム国による邦人の拉致と殺害を巡る状況は現在進行形であり、軽々な評価は慎みたいが、安倍さんはここぞとばかりに利用したいようだ(1月30日現在)。
1月25日、安倍首相はNHKのインタビューで人質事件に触れたうえで、「このように海外で邦人が危害に遭った時、その邦人を救出するために自衛隊が持てる能力を十分に生かすことはできない。そうした法制も含めて今回法整備を進めていく」と語った。
 閣議決定では「武器使用を伴う在外邦人の救出についても対応できるようにする」として、海外での武器使用に踏み込んでいるが、そうするとどうなるのかは今回の事件をみれば容易に想像がつく。
 自衛隊が「イスラム国」の支配地に出向き戦闘となり、中には「イスラム国」の捕虜になるものがでる。今回の事件が拡大するとともに、終わりの見えない繰り返しになるということであろう。
  集団的自衛権行使を考えるうえで国会がこの問題に触れないとしたら、それこそ政治責任の放棄である。この現実問題を踏まえて、安倍さんがやろうという集団的自衛権の行使を国民的議論に付す必要がある。その土台となるのが国会論戦だ。
 その国会論戦で、法律化にあたって安倍さんが集団的自衛権行使を巡る所信を表明せず、論戦を挑むべき岡田さんがそれを求めないというのだから、この国の政治家は一体どうなっているのか。

   やはり 怖いのだと思う

 安倍さんが所信表明を避けたのは、計算してのことだろう。
 自分の所信・決意をさらけ出したら、さすがに国民はこの人のかじ取りの危なさに気づき、政権が一気に崩壊する可能性がある。安倍さんにしても、この程度のごく常識的な読みをして、所信表明は得策でないと判断したと思われる。
 安倍さんをみると、強気の裏に支持率低下の恐怖、国民の批判に対する恐怖を抱きこんでいるなと思う。それが悪いといっているのではない。むしろ、いいことであろう。そのことは、間違った曲がり角づくりを止める要素になる。

   岡田さん、どうした

 自民・公明の政権党に安倍さんを止める要素は見当たらない。野党に期待したいが、所信表明を求めたのは日本共産党、社会民主党の2党だけ。
 最大野党で安倍さんと対決するといっていた民主党が、所信表明を求めず、自ら対決の場を避けた。
 戦後政治の重大課題になっている安保の課題で、党内が一致していないという事情があるようだが、代表となった岡田さんが戦後政治の歴史的視点に立てば、今やるべきことは解釈改憲を食い止めることであろう。
 安倍政権は危ない橋を渡っており、当事者は恐怖心にかられて急ぎ足で渡ろうとしている。岡田さん、政治生命をかけて、引き返せといわなければ。まさか自分の立場を守るためという計算が働いたのではないだろうね。

<追記>
 2月1日に人質が殺害されたとの報道があった。テロは日本を名指しで標的にするとの動画を配信し、これに対し安倍さんは、テロを罰するとのコメントを発した。
 折しも、憲法研究者の奥平康弘さんが亡くなり、氏の最後の言葉を2月1日付の赤旗が報じている。
 奥平さんは人質事件に触れながら、安倍首相が進める積極的平和主義について、「これは平和主義ではない。一言でいえば、『戦争への道』を開くことであり、この流れ中での人質事件であることをよく見るべきだ。今後の争点はあれこれの法律を作って、改憲を実践的に進めることにどう対抗していくかだ」と集会で述べたという。
 奥平さんの遺言を受け止めなければならない。