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   異例の意見広告

 26年6月25日の朝日新聞にアルゼンチン共和国の大統領府が異例の意見広告を出した。
 「アルゼンチンは債務返済を継続したいが、継続させてもらえない」と題して、アメリカの投資ファンドの動きと、そこが起こした裁判で投資ファンドの要求通りの判決を下した米ニューヨーク連邦地裁の判決に抗議する内容。
 判決通りに履行すると、同国は再びデフォルト(債務不履行)に追い込まれるとしている。
 日本の国の借金は1,025兆円となり、このまま放っておくとアルゼンチンのように国家破産するぞと、国民を脅す材料に使われるアルゼンチン。
 ところがこの脅しは国民を誤導して消費税増税を国民に押し付けるウソもいいところ。
 アルゼンチンが国家破産した本当のところを知ると、日本とはまったく違うし、アメリカが押し付けた新自由主義がいかに国民を窮地に追い込むかを知ることができる。
 アルゼンチン (グーグルマップより)
隣国ブラジルも経済格差拡大で
デモが頻発
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   2001年に債務不履行

 アルゼンチンは国の借金17兆円で国家破産した。日本の借金1,025兆円の1.6%という考えられないような少ない額である。これでODAなどの借金返済不能になり、2001年に預金封鎖。国債のデフォルト(債務不履行)により通貨暴落し国民の財産が消滅することになった。
 
 アルゼンチンは、国の借金の大半を海外投資家がもっていた。内実はアメリカの投資ファンドが有望な投資先として、アメリカ政府の介入政策の裏付けをもらいながら国債を大量保有したのである。
 アメリカ政府は、財政危機にあえぐアルゼンチンに対し、IMFを使って新自由主義の政治・経済政策を押しつけた。これがそもそもアルゼンチンの経済を停滞させた原因である。
 広告の背景にあるのは、2001年にアルゼンチンが陥ったデフォルトだ。広告によると、債権者の92.4%が元本のカットに同意したが、減額に応じなかった一部の債権者から格安で債権を買い取ったハゲタカ投資ファンドが全額の支払いを求め、米ニューヨーク連邦地裁に提訴し、地裁は6月16日、アルゼンチンに対し15億ドルを6月末までに支払うよう命じる判決を下した。

 広告は、債権者である日本や米国などの主要紙に掲載されたという。「我が国は、少数のどん欲な投機家グループのせいで過去、現在、そして将来もアルゼンチン国民を苦しめ続けるこの長く困難な紛争の解決に向け、公正でバランスのとれた交渉条件を推進する司法判断を期待します」と結んでいる。

   日本の場合は?

 日本の国の借金1,025兆円のうち、海外投資家が所有しているのは8%、80兆円で、海外投資家が全額返済しろといえば、国内投資家から80兆円を調達して支払える基盤を持つ。
 国の借金は、日銀が200兆円、日本の保険会社が190兆円、国内大手銀行が130兆円、国内中小金融機関が150兆円で670兆円となり、全体の3分の2を受け持っている。
 また、国民の金融資産総額は1,650兆円に達しており、そのうち53%は預貯金だというから、預金だけで874兆円である。
 もうお分かりと思うが、日本とアルゼンチンは借金の借り先がまるで違う。
 しかも日本は対外純資産の額でも23年連続で世界一である。
 日本が国家破産するという脅しは大ウソなのだ。

 政府は、アルゼンチンの広告を奇禍として、アルゼンチンのようになりたくなければ消費税10%増税に応じろと宣伝してくるかもしれない。
 われわれは、アルゼンチンのようになりたくなければ、新自由主義の政治・経済運営と決別し、格差社会を解消する政治・経済運営をしなければならないと主張する。
 安倍さんのやっていることは小泉さんと同じ極めつきの新自由主義だ。国家破産をまねくとすれば、安倍さんのいまの政治・経済運営が一番の元凶ということになる。