トリチウム汚染水を海に放出
東京電力は福島第1原発で汲み上げている地下水を5月21日と5月27日の2回にわたって海に流した。27日は560トンを海に放出したという。
この地下水には、トリチウムという放射性物質が含まれている。
東電が定める安全基準は1リットルあたり1,500ベクトル。
放出した地下水は外部の目で厳格にチェックしているというが、いくらの数値であったのか報道されていない。
一方、その東電は5月27日に汲み上げ用井戸の一本から基準値を超える1リットルあたり1,700ベクトルのトリチウムを検出し、この井戸の汲み上げを止めたと発表した。ということは、凍土壁ができていないので、高濃度汚染地下水が海にしみだしていると思われる。
10万トンの放出計画
昨年12月8日、東電は10万トンのトリチウム汚染水を海に放出すると発表し、漁民などの反対で引き伸ばしてきた経緯がある。しかし、東電や政治的な要請によって、放出をしぶしぶ承諾し、今回からの放出となった。
東電はこれからも1週間に1回のペースで海に放出するとしている。当然、東電が設定した基準をクリアした地下水を放出しているのだが、東電が設定した基準そのものが極めて甘いという指摘もある。
このトリチウムという物質がいかなる害をもたらすのか、諸説あり見解は180度違う。
トリチウムが体内に取り込まれると、体内被曝を起こし、遺伝子DNAに作用するためガンになるという説。「食品と暮らしの安全」というホームページで詳しく紹介しているので是非一読してみてはどうだろうか。
放出した海で魚がこの汚染水を体内に取り込んだとして、それは薄まったものなので人間が食してもほとんど影響がないだろうとする説もある。だが、こちらの説は魚に関してだけで、汚染水が飲料水として摂取された場合のことには触れていない。逆に言えば、トリチウムが体内に取り込まれると影響が出ることを前提としているといえる。つまり、絶対大丈夫ということはないのだ。
代々木オリンピック大プール133杯分
トリチウム1,500億ベクトルの放出
東電が放出を予定している地下水10万トン。これは代々木オリンピック大プール133杯分にあたる。東電の体質からして、基準値ギリギリの1リットル1,500ベクトルの水を放出したとしたら、福島近海には1,500億ベクトルという途方もない放射性物質がまき散らかされることになる。
1トン=1,000リットル
10万トン=100,000,000リットル
1,500ベクレル×100,000,000リットル=150,000,000,000ベクトル
ある学者によれば海のトリチウムは表面に留まるため、水蒸気に含まれ雨として地上に降り注ぐ性質をもつという。したがって、福島は特にだが、東北関東一円の雨にトリチウムが含まれて降り注ぎ、それが飲料水となって体内に取り込まれ、ガンに結びつく可能性は否定できないという。
危険性だけを煽る目的でこのコラムを書いているわけではない。将来を担う子供たちのために、政府、関係機関、東電は、厳格な検査は当然として、正確な情報を国民に提供しなければならない。また、放射性物質が及ぼす影響についても正確な情報を提供しなければならない。なによりも、国民の安全を軽視し、大丈夫だろうという甘い判断で対処することはやめていただきたい。