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  就職氷河期よりも率低下

 厚生労働省と文部科学省は3月12日、今春卒業予定の大学生の就職内定率が、2月1日時点で前年同期を6.3ポイント下回る80.0%で、1996年の調査開始以来、過去最悪であると発表しました。(左のグラフ=厚生労働省HPから転載)
 就職氷河期と呼ばれた2000年の81.6%も下回っているといいます。
 また、厚労省によると、今春高校を卒業する就職希望者の内定率(1月末時点)は81.1%であり、大卒、高卒とも雇用情勢は最悪の状況です。

    <厚生労働省 2010.3.12 発表>

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 厚労省と文科省は共同で就職内定状況を毎年調査しています。調査時点と発表時期は表のとおりです。(対象大卒、なお、あくまでも内定の話です。)
    調査時期      発表時期
  平21年10月1日……11月19日
       12月1日……  1月14日
  平22年 2月1日……  3月12日
       4月1日……  5月中旬
 新卒者の最終調査結果は5月中旬にならなければ判明しませんが、グラフから4月1日の結果を推察することは可能です。
 昨年の2月1日時点が86.3%で今年は80.0%ですから、前年同期92.7%の水準です。この水準で推移すれば、前年の4月1日時点は95.7%なので、今年4月1日時点の就職率は88.7%(95.7×0.927)と90%を割り込むことになります。

  深刻な実数が浮かび上がる   

 マスコミの報道はこの問題に対して切込みが足りません。発表された率だけを伝えたり、一部の企業の採用動向を報じるのみです。ちなみに中国は、大学卒業者の就職難を報道規制の対象にしたといいます。社会問題化を恐れているからでしょうが、日本でも似たようなものです。
 率では一般的な話となり、実感がわきません。実際の人数はどうなのでしょうか。
 大学生は1学年約50万人(全国で)といわれています。大学院への進学や採用を希望しない学生もいるでしょうから正確な数字とはなりませんが、仮に90%が就職希望だとすれば、このままでは50,850人が職に就けないことになります。
  * 450,000-(450,000×88.7%)=50,850
 高校生は実数が発表されています。文科省によれば、平成22年3月高校卒業予定者は1,073,619人、このうち就職希望者は187,360人です。内定率は大学生とほぼ同じ推移ですから、4月1日時点を仮に90%として1割の18,736人が職に就けないことになります。
 大学・高校で就職を希望する新卒者が69,586人、就職できないのです。

  求められる大企業と国の役割

 おりしも同じ日の3月12日、衆院厚生労働委員会は政府の提出した子ども手当法案を一部修正して可決し、その後本会議でも成立し、支給が決まりました。
 2010年度に中学生以下の子どもがいる世帯に、子ども1人あたり月1万3千円を支給するのが柱。10年度の支給に限った時限立法で4月に施行し、6月から支給されます。
 成立時のテレビインタビューで若い女性は「これで子供を産もうとは思いません。少子化対策はもっと抜本的なものがないとだめなのでは」と答えていました。
 子供を生み、苦労して育てても就職できない、就職してもいつリストラされるか分からない……そんな社会状況や将来不安を、若い人たちは肌で感じているのでしょう。
 若い人たちの活気を奪っている日本の現状。少なくとも社会に踏み出す時に挫折を味わせる愚はさけたいものです。
 7万人の雇用は、巨額の内部留保をため込んでいる大企業、定員削減を進めすぎて行政サービスを低下させている公務職場が受け皿となれば、クリアできるはずです。
 利益の還元、税金の使い方が日本社会の在り方と将来に直結します。就職氷河期よりも深刻な自体に、政府のリーダーシップを求めたい。