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 トヨタ社の一部車種に、ブレーキとアクセルの不具合がありリコールに至りました。車の文明論的評価は別として、毎日のように起こる交通事故の死傷者数から見ても、「走る棺おけ」「走る凶器」との喩えは、車の持つ危険性を示すものとして誰もが認識しておくべきことといえます。
 その凶器性の根幹はスピードでしょう。人知を超えるスピードが出るように機械が製造されているのですから、制御する人間の意思が機械に明確に伝わることが凶器性を回避する唯一のシステムとなります。その意味で、ブレーキとアクセルは車の制御の基本中の基本なのです。
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 北米トヨタは、アクセルペダルが戻りにくくなるとして、07年9月に主力車種の「カムリ」など5万5000台を対象にフロアマットのリコールを実施しましたが、09年10月には対象を8車種計426万台と過去最大規模に拡大。さらに今年1月にはアクセルペダル自体の欠陥も見つかったとして230万台のリコールを実施しています。
 問題は企業としてのその動きです。2010年2月22日の各新聞社は一斉に次の報道を流しました。
 「トヨタ自動車の大規模リコール(回収・無償修理)問題に絡み、北米トヨタが09年7月の社内文書で『07年に実施したフロアマットの欠陥に関するリコールの台数を5万5000台に抑えたことで1億ドル(約91億円)超の費用を節約できた』と報告していた、と複数の米メディアが21日報じた。」(毎日新聞)
 コストを最優先する姿勢が露骨に示されています。本来なら、07年に431万台のリコールを実施していなければならなかったのです。426万台に乗った人々と、その車が脇を通り抜けた数百万人は、トヨタの利益優先の前に生存権が脅かされたのです。
 制御が必要な機械を作る会社では、安全を第一義的に考え、不具合があれば何をおいても直すという体制がトップから一作業員まで思想として貫徹しなければならないのに、重要幹部が利益維持に走るのですから、トヨタは明らかに考え違いをしているのです。
 考えが間違っているため、対応も誤りを繰り返しています。事態の推移をみる限り、トヨタは相当重症です。

税務署も利益優先主義の弊害

 確定申告を控えて、税務署から納税者あてに申告書が送付されてきますが、ある納税者に全く別人の申告書がプレプリントされて送付されてきました。住所は合っているのに名前や整理番号が違うのです。税務署にその旨連絡すると、「家族じゃないですか。家族に内緒で申告している人もいますから。」と、実に意外で心外な回答。整理番号をいうと「その番号の人は別住所ですね。その申告書は破って捨ててください。」といいます。たまたま予定納税額が入っていなかったものの、予定納税額が記されていれば、前年の納税額が推測できる個人情報となるのに、そんなことも眼中になし。謝罪もしないし、誤送付の原因を追求する姿勢も見せません。あきれて上司に代わるよう求めて事情を話したところ、検討して連絡するとのこと。しばらくして局幹部から謝罪の電話連絡があり、署からは統括官が申告書の回収に伺いたいと連絡があり、飛んできたしだいです。
 回収に来た統括官は、送付を外注しており、税務署サイドのチェックはしていないといいます。外注先が住所氏名の入力時に、氏名を一段ずらして入力したものと想像されます。一件ですんだのか、何件も段ずれを起こしたのか定かではありませんが、何件も誤送付する下地があることは疑いありません。
 トヨタと対比するのはいささか面映ゆいものの、行政機関として個人情報の取り扱いは慎重を期すべきところでしょうが、ある意味まったくチェックする体制がないというのですから、これも単なるミスというより考え方が違っているのではないでしょうか。
 公務のアウトソーシングによるコストカットは、つまるところ利益優先主義と思想的に大差がありません。

 利益優先主義、効率至上主義が倫理なき資本主義として暴走し、世界全体や日本の社会を歪めている・・・トヨタと税務署の対応から深刻さが実感されます。まずはルールある資本主義をめざし、企業も行政も根本的に考え方を改めてほしいものです。