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 元国税庁長官である大武健一郎氏の妻の告発文を週刊朝日がとりあげた。妻いわく、脱税していた、重婚している、というのだから、国税庁のトップにいたものにとっては致命的な暴露であろう。
 氏は、税理士業界ではそれなりに幅を利かせているTKCの会長に天下りしていたのだから、なおのことで、報道後に会長を辞任した。
 火消しに必死のようだが、その記者会見に現職の国税職員が同席したというのだから、火に油を注ぐ事態になっているようだ。
 以前に元札幌国税局長の脱税事件があり刑事告発されたが、この職員はいわゆるノンキャリアのたたき上げであった。キャリア官僚の大武氏に税務調査が及ぶのか、今後の動向が注目される。

 それはそれとして、ここでトピックスとして取り上げるは、氏の妻が暴露したもう一つの話である。
 長女が20歳になり、区役所から国民年金を納付するよう連絡が来たとき、大武氏は娘に繰り返し言ったそうだ………
「国民年金なんか払うな。将来は破綻してもらえないから損をする。俺は厚生省で年金のスペシャリストだったんだぞ」

 厚生省の年金スペシャリストだったかは別として、大武氏は高齢化社会について分析を行いそれなりの識見を持っていた。その意味では、娘に本音を吐露したということであろう。
 娑婆では危ない橋をすり抜けながら渡世しているようだが、娘にはまっとうな説示を行ったというわけだ。

 折りしも7月14日の日本経済新聞・電子版である数字が報道された。
 それは、サラリーマンが40年間厚生年金に加入し、専業主婦とともに平均寿命まで生きた場合を前提として、生涯年金の損得はどうなるのかというもの。
 2010年末時点で20歳の方は2,280万円の払い損、30歳の方は1,890万円の払い損になるというのだ。

 国民年金もおして知るべし。こんなに損をする制度に対して、掛金を払うものはいなくなる。破綻は火を見るより明らかだ。こういった情報や数字を知る立場にあった大武氏が娘に言ったことは、ある意味で正しいといえる。
 だが、それでいいのか。
 財務省のキャリア官僚は自らを富士山にたとえ、国を支え導いているのはわれら財務官僚だけだと自負しているといわれている。とすれば、公僕であり全体の奉仕者としてそのトップに位する高邁な財務官僚としての道があろう。
 決められない政治家を「指導」して、国のあり方、将来展望を示し、大企業の横暴を規制し、応能負担原則を貫いて財源を確保し、国民生活の安定と繁栄のために身をなげうって働くことだ。
 それを財界の要望だけを聞いて消費税増税に走り、財源に目処がつけばまた無駄遣いに向かう政治家に楯突くでもない不甲斐なさだ。
 大武氏も自負していた財務官僚の1人であったなら、当時の娘に「いまのままでは破綻しかねない。オレは若者のためにも財務官僚としてなしうることをやるから、お前たちもしっかりやってくれ」というぐらいの器量がほしかったが、どうも違う様子が暴露された。

 先生、警官などのしかも破廉恥な犯罪が毎日のように報道されている。政治的パフォーマンスの材料とされている公務員攻撃の問題もある。石原・橋下知事のように火をつけあおる政治家がいる。社会的に影響がある人たちが、自分さえよければいいということで振舞えば、それなりの結果にしかならない。
 毎週金曜日の官邸前集会。オスプレイ反対行動。大きな変化が起きつつある。