ホテルの1室で血まみれの死体が発見された。ホテル関係者によれば、起きてこないので不審に思いなかに入ってみると死体があり、鍵は部屋の中にあって密室になっていたという。 バスルームのカガミに血で書かれたM、J、Kの文字。警察は被害者が残したダイイングメッセージとみている。 やがて、警察の調べでガイシャは「国民」と判明。 3文推理小説まがいのストーリーが政治の世界で恥も外聞もなく描かれた。 ホテルの1室で民主党、自民党、公明党の3党による密室談合会議が行われ、消費税増税で3党が合意した。6月15日のことである。 | 密室談合 ・・・民主主義の抹殺行為 |
わずか13時間の審議
新たな法案といえる新法および修正法案の、委員会における審議時間はわずかに13時間である。
そして、関連法案が本会議に上程され、6月26日、衆議院で成立した。
歴史に残る暴挙である。中身がとにかくひどすぎる。
民主党はまず「税と社会保障の一体改革」という看板を掲げた。税が頭に来ては国民の支持が得られにくいと「社会保障と税の一体改革」と順番を入れ替えた。
社会保障の問題を、年金、医療、介護、少子化として、例えば後期高齢者医療制度の廃止や子育て支援増強策などを盛り込んでいた。また、その財源として消費税増税が必要というものであった。金持ちに対する増税案も曲りなりに盛込んだ。
ところが、野田首相の主張理由が財政危機の打開に切り替り、消費税増税だけが前面に出てきた。
小沢グループが反対しはじめて、党内のとりまとめが厳しさを増してきたら、野田首相は自民・公明との合意による成立に突き進んだ。
6月15日、密室で3党が合意した。
3党合意で新たに作られた法案がとんでもないものである。マスコミが消費税増税を前面に取り上げるため、国民に浸透していない節がある。
全部で本文15条、附則2条の法律案であるがポイントと思われる条文を読んでほしい。
●社会保障制度改革推進法案
(基本的な考え方)
第二条 社会保障制度改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
一 自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。
二 社会保障の機能の充実と給付の重点化及び制度の運営の効率化とを同時に行い、税金や社会保険料を納付する者の立場に立って、負担の増大を抑制しつつ、持続可能な制度を実現すること。
三 年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とし、国及び地方公共団体の負担は、社会保険料に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とすること。
四 国民が広く受益する社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点等から、社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとすること。
(公的年金制度)
第五条 政府は、公的年金制度については、次に掲げる措置その他必要な改革を行うものとする。
一 今後の公的年金制度については、財政の現況及び見通し等を踏まえ、第九条に規定する社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ること。
二 年金記録の管理の不備に起因した様々な問題への対処及び社会保障番号制度の早期導入を行うこと。
(社会保障制度改革国民会議の設置)
第九条 平成二十四年二月十七日に閣議において決定された社会保障・税一体改革大綱その他既往の方針のみにかかわらず幅広い観点に立って、第二条の基本的な考え方にのっとり、かつ、前章に定める基本方針に基づき社会保障制度改革を行うために必要な事項を審議するため、内閣に、社会保障制度改革国民会議(以下「国民会議」という。)を置く。
附則
(生活保護制度の見直し)
第二条 政府は、生活保護制度に関し、次に掲げる措置その他必要な見直しを行うものとする。
一 不正な手段により保護を受けた者等への厳格な対処、生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと。
歴史上初めて「自助」を条文に明記
これは「改悪推進法案」だ
この法案の最大の特徴は、社会保障の基本のトップに「自助」を掲げたことである。
内閣法制局が説明するところによると、「自助」という言葉が条文に盛込まれた初めての法案になる。
「自助」とは、自分で何とかすること。これがなぜ社会保障のトップの基本になるのか意味不明である。
次に「共助」である。この意味をすぐ答えられる人はそういない。何のことはない「保険」のことである。生命保険や損害保険、共済制度のことを「共助」という。自分で保険料や共済掛金を支払い、その支払額の大きさに見合う保険金=保障を自分で確保しなさいということである。これって、「自助」と同じであり、社会保障と関係ない話だと思うが、これが二番目の基本として掲げられている。
最後が「公助」である。最後に位置づけられた「公助」は、税金や社会保険料を納付する者の立場がかぶってくるのがミソ。要は社会保険料の納付額に応じた社会保障ということである。
払わざる者にはそれなりのことしかしないという思想であり、それが附則の第2条(生活保護制度の見直し)にいかんなく表現されている。
日本国民の最後のよりどころである社会保障が、これでは機能しない。
しかも、もし社会保障の充実を望むなら、それに見合って消費税を引き上げるというのが第2条1項4号である。
富裕層や大企業に対する課税強化ではなく、消費税を際限なく引き上げるお墨付き条文である。
消費税は赤ちゃん、学生、失業者、老人まで、文字通りあらゆる世代・あらゆる人が、逆進性のもとで負担する税金である。そもそも社会保障に反する概念の税金によって社会保障財源に充てるということ自体、政策的に誤っているのだが、それを明記した。
番号制に関しても条文に盛込んだが、これまた意味不明である。
年金問題への対処および社会保障番号制度の早期導入というが、年金は既に番号がふられているので、ここでいわんとする社会保障番号が何を意味するのか分からない。
すでに「マイナンバー法案」が上程されているのだが、それは社会保障に限定したものではなく,税金や医療、災害、やがては民間活用も狙う国民総背番号制といえる内容をもっており、その早期成立を狙う意味なら、まやかし表現としかいいようがない。
とどのつまりは、「国民会議」へのマル投げ。これまでの方針にかかわらず、「自助」の基本方針にのっとって社会保障「改悪」を行うとした。
セーフティネットの破壊と日本経済の破壊
国民を殺すのも同じ
大企業の内部留保に適正な課税を行い、大企業に対する減税措置を改めれば大きな財源を確保できる。また、累進税率を強めて所得税による応能負担強化によって財源を確保し、これらの財源で雇用と社会保障を充実すれば所得再配分となり、若者に活気が生まれ、国民生活は安定し、経済も好転していく。
密室での3党合意に基づく消費税増税だけの税金対策と、真逆の社会保障政策は、国民のセーフティネットをいよいよ危うくし、国民の懐を直撃し、日本経済を破壊する。
被害者は国民、犯人は民主、自民、公明の3党。この推理は間違っていますか?