「知らなかった」で、お咎めなし
鳩山由紀夫前首相が実母から巨額の資金提供を受けていた事実が発覚し、贈与税約6億1000万円を納付した。この納税に対して、国税当局が、鳩山氏側に02〜03年分の計約1億3000万円を還付していたことが12月24日に分かった。
鳩山氏の贈与税無申告は、鳩山氏の資金管理団体「友愛政経懇話会」による偽装献金事件の捜査過程で発覚した。捜査の手が入らなければ、ずっとダンマリを決め込んでいたのだろう。ところが、発覚後、鳩山氏は資金提供を「知らなかった」と捜査当局に説明したという。
何年にもわたって、毎月1,500万円を貰っていたことを知らなかったということ自体噴飯ものだが、国税当局は悪質な仮装・隠蔽行為はなかったとの判断から、時効分を返還したわけだ。鳩山氏は、本来なら納付すべき税金を免れたことになる。
実母からの資金提供は、顧問弁護士の調査報告書などによると、提供は02年7月〜09年5月までの間、月額1500万円、総額で12億4500万円に上るという。
これを受け、国税当局が税務調査を続けていた。
しかし、贈与を知りながら隠したなどの不正行為が認定されなかったことで、02年分は08年3月、03年分は昨年3月に時効を迎えていたと判断された。
鳩山氏は、2月の党首討論で「(納税者に)納税がばかばかしいとの思いがあるのは誠に申し訳ない」と陳謝していた。
加算税と還付加算金はどうなったのか
当局関係者の話では、事件の処理や捜査において課税問題が生じるものについて、警察は国税当局に課税通報することになっているそうだ。
今回の件は捜査段階で把握されたのだから、当然検察や警察から国税当局に通報されたと思われる。一般的に、通報を受けた国税当局は迅速に調査に移行するという。そうしないと、非違事項を具体的に指摘する前に自主的に修正や期限後申告を提出されると、調査による加算税を課税できないからだ。これは国税庁の事務運営指針に明記されている。
鳩山氏の期限後申告に対して、自主的期限後申告としての無申告加算税(5%)を賦課したのか、調査による無申告加算税(15%、50万円以上は20%、鳩山氏の場合は大半が20%となる)を賦課したのか、報道では判然としない。はっきりしたのは、不正に対する無申告加算税(40%)は賦課されなかったということである。
一方、1億3000万円の還付金に対する還付加算金の扱いについても報道がない。
還付金に対しては、利息に相当する還付加算金(原則7.3%、現在は4.3%)が計算されて還付本税に上乗せされて還付される。銀行預金の利息に比べて破格の利率であり、もし、鳩山氏の還付金に還付加算金が上乗せされたとしたら、大変な額になる。
単なる誤納金扱いならつかないが、なにしろ当初の納税の仕方が不透明なのでこれはなんともいえない。
マスコミはこの点を鋭く追及して報道してほしい。
一般の納税者がちょっとしたミスで過少申告をすると、税務署は不正行為だから7年間遡及するといきまく。余りにも扱いが違う。
「納税がばかばかしい」を通り越し、「鳩山氏と同じ扱いをしろ」といいたくなるというものだ。