長期化する物価下落(デフレ)からの脱却なるか ?
政策金利は0~0.1%とするゼロ金利政策は維持する。
金融市場に流れるお金の量を増やし、金融機関が企業に融資しやすくして経済活動が活発になるよう促すとしている。
金融政策決定会合では、金融政策運営で目指す物価上昇率の水準を「当面1%をめざす」としている。
この決定に安住財務相は、「実質的にインフレターゲット(目標)を設定したものと受け止めている」と語り、日銀の今回の決定に期待感を示した。
株式市場でも日銀の今回の追加金融緩和やそれを受けた円安を好感し、幅広い銘柄が買われ、日経平均株価が上昇している。
GDP 年率2.3%減
内閣府が発表した2011年10~12月期の国内総生産(GDP・季節調整済)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算で2.3%減である。
物価変動を反映し、生活実感に近い名目GDPは前期比0.8%減、年率換算で3.1%減である。
マイナス成長は輸出の減少による影響が大きく、輸出依存の経済政策の行き詰まりがますます鮮明になってきている。
内需主導の経済成長への転換こそが緊急に求められている。
賃金だけは「デフレ」
一方、政治的には国家公務員給与の削減法案が可決され、給与・賃金の下落は止まるどころかさらに加速している。
日本経済が現在のような「デフレの罠(わな)」にはまり、デフレスパイラスから脱却できないのは、政府・財界の認識とは異なり、賃金抑制による「賃金デフレ」と、規制緩和による非正規労働者の増加に原因がある。
国税庁調査によると、民間の平均賃金は1997年の467.3万円をピークに下がり続け、2009年には405.9万円と61.4万円も下落している。
諸外国では一貫して賃金は上昇しているが、日本だけが賃金を引き下げられている。
賃金抑制の結果、大企業内部には膨大な内部留保は蓄積され、しかも年々自己増殖している。
長期化する物価下落(デフレ)からの脱却を急ぐのであれば、長期化する賃金下落(デフレ)からの脱却をさらに急ぐべきである。
貧困と格差拡大
厚生労働省が発表した2011年の賃金構造基本統計調査によると雇用形態別に見た月額賃金(ボーナス・残業代除く)は、正社員が312,800円。非正規社員が195,900円と格差が一層拡大した。
非正規社員の賃金は、正社員の63%である。
年代別では、45歳~50歳代で格差が最も大きく、正社員の49%の賃金である。
預貯金なし 3割に ・・・ 過去最悪に急増
金融広報中央委員会が発表した「家計の金融行動に関する世論調査」(2011年)では、2人以上の世帯で預貯金などの金融資産を「保有していない」と回答した割合が28.6%と過去最悪であった。
金融資産をまったく持たない世帯は1990年代には10%程度であったが、規制緩和による非正規雇用の拡大、賃金抑制、社会保障の削減につれ急増してきた。
不況の深刻化や所得の減少で預貯金まで使い果たした世帯が増加したためだ。
かつて、きんさん・ぎんさんが100歳を超えマスコミに出演したとき、出演料は何に使いますか?の質問に「老後のために貯金します」と応えていたが、いま国民の3割に近い人が「病気や不時の災害」への備えもなく、「老後の生活資金」のメドもなく、その日その日を生活している状態に陥っている。
インフレターゲット(目標)も良いが、国民がいま一番求めていることは、「生活の安定」と「将来の保障」である。
「経世済民」 = 「世の中を良く治めて、人々の苦しみを救う」 ・・・ 日本の政治に求めたいものである。