大企業は大幅な利益
2011年3月期の大企業決算の特徴は、①自動車メーカー大手8社の連結決算で、各社とも2008年秋のリーマンショックから立ち直り、売上高、営業利益とも大きく回復している。営業利益はホンダが前期比56、6%増の5697億円。日産自動車が72、5%増の5374億円。トヨタ自動車が320%増の4682億円と膨らませた。 |
増益要因の一つである下請単価等の原価コストでみると、ホンダが「コストダウン効果」で1533億円増。日産自動車が部品等の「購入コスト減」で1058億円増。トヨタ自動車が「原価改善」で1800億円増と徹底した雇用賃金・下請単価犠牲の中で大幅な利益を獲得している。
大手銀行5グループ(三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそな、三井住友トラスト)の連結利益は合計で前期比55、8%増の1兆7630億円だ。
石油元売大手3社(新日本石油、出光興産、コスモ石油)も揃って大幅な経常利益となっている。
「大連立」で消費税率17%
日本経団連は、「社会保障と税・財政の一体改革」に合わせて消費税を「速やかに10%まで引き上げる」と提言した。
経済同友会は、民主、自民の「大連合」について「政策課題を絞り込んで、第2次補正予算・成長戦略・税と社会保障一体改革の3点セットでやってもらいたい」と発言した。消費税については17%まで引き上げと踏み込んでいる。
日本商工会議所は、「復興税として消費税引き上げはやむを得ない」との文書を提出している。
政府の東日本大震災復興会議は、「復興への提言」で復興財源として消費税などの基幹税(所得税・法人税・消費税)の増税を提言した。
政府・与党は、「社会保障・税一体改革成案」を決定した。
「成案」は、社会保障の安定財源として、2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げることを明記している。
「大連立」であろうとなかろうと、民主も自民も増税への基本路線に大きな違いはない。
この1年でも、労働者と下請中小企業の犠牲で大幅な利益を拡大し、内部留保を244兆円にも膨らましている大企業こそ「復興財源」としての「国債」(従来の国債とは別の枠組)を引受、安易に国民負担を求めないことこそ社会的責任ではないか。
社会保障の財源は 消費税ではない ― 世界の常識
社会保障の財源は、①事業主負担保険料、②本人負担保険料、③その他の税、そして、④消費税及び⑤その他で賄うのが世界の常識である。
日本は世界に比し、①事業主負担保険料が極端に低く、②本人負担保険料が高く、③消費税で賄うのが高くなっている。
政府の試算でも2015年に社会保障にかかる公費は約45兆円。消費税10%にしても25兆円。22兆円足りない。
社会保障財源を全て消費税で賄うとなると、さらなる消費税増税か、社会保障の大幅削減かを国民に追い求めてくる。
なぜ、社会保障の財源が消費税でなければならないのか。二者択一を国民に求めてくる政府の「税・社会保障一体改革」を根底から覆す議論が必要である。
世帯所得114万円の減少(15年間で)
厚生労働省の2010年国民生活基礎調査では、1世帯あたりの平均所得は15年間で114万6千円減少し、日本国民の低所得化が進行している実態が発表された。
同調査によれば、1世帯あたり年平均所得のピークは1994年で664万2千円。その後は低下しつづけ、2009年には549万6千円となった。
子育て中の働き盛り世帯でも、1996年に比し2009年は84万3千円減少した。
厚生労働省でも世帯所得減少の要因を、①給与の低下、②非正規雇用の増加、③景気の低迷などと分析している。
この10年以上雇用と下請中小企業の破壊を進め、内部留保を100兆円以上も膨らました大企業の責任はここでも重大といわざるを得ない。
「税・社会保障改革案」はこうした大企業の責任には触れず、「自立・自助を国民相互の共助・連帯の仕組みを通じて支援していく」と社会保障の理念を大きく変更した。
憲法25条は、「国は、(国民)すべての生活部面について、社会福祉、社会保障、及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と社会保障の責任は国にあることを明記している。
自己責任や支え合いを強調し、国の責任を放棄する。「税・社会保障一体改革」は、国による国民を死援(死ぬよう援助)する改革といわざるを得ない。
子供の成長や子育てを支援し、若者が安定して働ける雇用確保、高齢者が安心して生活できる社会。そうした「税・社会保障一体改革」こそ早急に望まれる。