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   円高苦境 ― 中小企業直撃

 日本経済新聞社が8月22日まとめた「社長100人アンケート」で、急激に進んだ円高が企業収益の重荷となっていることが鮮明となった。
 現状の円高レベルを放置すれば、国内産業は空洞化、雇用状況は悪化、先行き不安から国内消費は下向し、デフレの悪循環は止まらないという。
  社長100人アンケートは大手、大企業である。大手、大企業のしわ寄せを受けるのは地域の中小企業と雇用、家計である。

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 製造単価や物価の広い範囲で下落するデフレが続けば、中小企業収益の更なる減少、賃金・雇用の悪化、投資・家計消費の手控えとデフレスパイラルに陥っていく。
 国内企業がデフレ予想から抜け出せない理由は、円高と国内需要の冷え込みだ。さらに拍車をかけているのが、危機感のない政治の無策だ。
 急激な円高の背景には、アメリカ・EUの金融危機の深刻さがある。
 2008年のリーマン・ショック以来の危機ともいえる状況の下、投機筋によって円が買われている。
 こうした状況に対し、政治は国民の暮らし、経営と雇用をどう守るかの議論はそっちのけで政争に明け暮れている。
 経済の構造的危機と政治の無策が中小企業、国民生活の混迷を増長させている。

  GDP - 年率1、3%減

 内閣府が8月15日発表した2011年4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整済)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0、3%減、年率換算で1、3%減である。
 物価変動を反映し、生活実感に近いGDPは前期比1、4%減、年率換算で5、7%減である。
 深刻なのは個人消費の落ち込みである。実質で前期比0、1%減、名目で同0、7%減である。
 また、完全失業率は2ヶ月ぶりに上昇、原発事故による農林・畜産・水産物の出荷制限や風評被害は、経営と暮らしを直撃し、国民生活の再建の見通しさえつかない状況だ。
 政府・野党(民・自・公)は東日本大震災復興と称し、基幹税である消費税・所得税・法人税増税に道を開いたが、これは、最悪の財源調達であり、個人消費をさらに冷え込ませ、日本経済とくに中小企業経営を出口のない閉塞状況に追い込むことになる。
 中小企業を中心に企業倒産は阪神・淡路大震災の3倍を超え、失業率も高くなっている。
 日本経済を立て直すには、大企業・輸出依存型経済から家計消費、中小企業・農林水産業、雇用など、地域経済の再建を中心とした内需型経済社会づくりをする必要が問われている。
 ▽非正規労働者の正社員化、▽最低賃金の抜本的引き上げ、▽長時間過密労働の是正、▽下請いじめの速やかな是正、▽大企業と中小企業の対等な経済ルールの確立などだ。

  年末商戦は苦戦 ?

 「円高還元セール・・・」「円高の今がチャンス!」「円高! 緊急企画」と百貨店、旅行会社の広告が踊る。
 「円高危機 賃金・経費を削れ!」「円高に対処 下請単価を見直せ! 海外移転だ!」と大企業は号令。
 家計は先行き不安から消費どころではない。
 相反する2つの状況が同時進行している。
 第一生命経済研究所は、「個人消費の先行きが低調に推移する可能性大」とするリポートを発表した。
 個人消費の先行きは、10~12月は減少に転じる可能性を予測している。
 「地上デジタル移行に伴う駆け込み需要の先食いと反動減」により個人消費は年末に向け下振れリスクを抱えているという。

  「政党助成金320億円」 削れ !

 「大震災の復興、日本経済の再建、財政危機の克服には、増税と国民の痛みが必要(―税と社会保障の一体改革―)だ」と政治家は国民を脅かしている。
 ならばまず、政党助成金320億円を率先して削り、政治家自ら痛みを受けるべきだ。
 320億円など・・・ と言うかもしれない小さな一歩だが、大きな1歩へと発展するものである。