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    景気底割れの懸念

  内閣府が5月19日発表した1月~3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0、9%減、年率換算で3、7%減と大幅な落ち込みとなった。
 物価変動を含む名目GDPも前期比1、3%、年率5、2%の大幅減となった。
3月11日に起きた東日本大震災と福島原発事故で、消費や生産・輸出が一気に減少。
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 持ち直しの兆しが見えていた日本経済は最後の20日間で暗転した。
 震災と原発事故の影響が全面的に反映される4月~6月期のGDPは大幅なマイナス成長となる見通しだ。
 日本百貨店協会が5月19日発表した4月の全国百貨店売上高も前年同月比で1、5%減となり、2ヶ月連続のマイナスとなった。
 消費を控える自粛ムードが緩和したことから、14、7%減となった3月に比し改善した。
 大きく落ち込んだのは企業の設備投資(前期比0、9%減)だ。
 民間調査会社の調べでは、震災関連倒産が100社を超し、阪神・淡路大震災の2倍の倒産件数に達している。
 厚生労働省の調べでは、東北3県で失業や休業した人は大震災後10万6461人にも上り、前年同月比2、4倍となった。
 実質、名目とも2期連続のマイナス。マイナスに転じた前期(10月~12月)の延長線上でさらに悪化しており、景気の底割れともいえる深刻な状況となっている。

  深刻な個人消費・設備投資の冷え込み

 家計の消費支出はマイナス0、6%と小幅な減少に見えるが、雇用や所得環境の悪化から個人消費の向上になる材料が見えない。
 企業の投資意欲の低下から設備投資への手控えも出ている。
 福島原発の事故も消費に少なくない影響を及ぼしている。
 政府はこうした日本経済の状況に有効な手立てを打ち出せずにいる。震災復興、原発事故対策、被災者救済、深刻化する営業と雇用に有効な施策をまったく示していない。このままでは政争の具にされ日本経済はさらに深刻な状況に落ちることが懸念される。

  増税は経済復興に逆行

 長期停滞に苦しむ日本経済の復興には、地域経済の活性化こそ ・・・ と主張してきた。
 政府は、金は出すけど口は出さない。復興は地域の活性化からと政策に真剣に取る組むべきだ。
 金は出さずに口をだす。規制、規制で地域をがんじがらめにしている官僚的政治から、地域住民を主体とした地方経済の活性化こそ今求められている。
 大震災復興をめぐって、消費税をはじめ法人税、所得税増税の動きが活発化しているが、それは内需、個人消費を落ち込ませ、経済の再生にはつながらない。

  産業天気予測図「雨」
       
製造業、本格回復は夏以降?

 日本経済新聞社が5月29日まとめた4月の産業天気予測は「雨」が主要30業種のうち6業種に増大した。「小雨」は10業種だった。
 大震災の影響を反映し、自動車や旅行、ホテルなどで生産、稼動が低迷しており、原材料価格の高騰も企業の収益を圧迫すると予想している。
 悪化予測したのは石油、電力、情報、自動車、精密機械、食品、飲料、コンビニエンスストア、旅行、ホテル、広告の9業種に上っている。
 製造業の生産が本調子に戻るのは夏~秋との見方が多い。非製造業は消費者の節電・節約志向を受け新たなニーズを取り込めるかがカギとなりそうだ。