ke106.jpg

  役員の報酬は大幅増なのに 労働者の賃金は大幅減

   企業名    役員報酬の平均増加額    労働者賃金の平均減少額
  スルガ銀行     △7,147万円         ▼ 9.8万円
  シダックス      △6,880 〃         ▼18.4 〃
  任天堂        △5,389 〃         ▼25.0 〃
  三菱電機       △3,522 〃         ▼ 3.3 〃
  トヨタ自動車     △2,378 〃          ▼20.4 〃
  オリンパス      △2,404 〃          ▼37.4 〃
  日本郵船      △2,050 〃          ▼64.3 〃
  セイコーエプソン  △1,250 〃         ▼26.9 〃
                               * 前年期比較

 2018年3月期決算も出揃った。 年間報酬1億円以上の役員がいた上場企業240社で役員報酬が1人平均で1,000万円以上大幅に増加する一方、労働者の平均賃金はマイナスになっていることが判明した。
 <2018年春闘>大企業の賃上げ率2.54% 経団連発表 ― 安倍首相要請(3%)で高水準。
とマスコミを賑わしたが、結果は上記のとおりである。
 景気が回復基調にあり、労働者賃金は上昇しているとの政府・日銀のコメントとは真逆の数値である。 企業は、儲けたお金を労働者には分配せず、内部留保で溜め込め、経営一族で分配し、株主へ配当(株価の上昇)している現実の姿を現している。

 2018年3月期決算で年間報酬1億円以上を得た役員が538人にのぼり、平均報酬額は7,015万円(前期期比1,065万円増)であった。
 1億円以上の役員が最も多かったのは三菱電機の22人。 22人の報酬額合計は32億9千万円で、前年期比7億2千万円の増加である。

 240社のうち99社で労働者の名目賃金が前年より低下。 トヨタ自動車では役員の平均報酬が前年期比2,378万円増加する一方、労働者賃金は20万円以上減少した。 三菱電機も同様、役員の平均報酬が前年期比3,522万円増加する一方、労働者賃金は3万3千円減少した。

 東京商工リサーチの担当者は「優秀な経営者は世界規模の争奪戦になっている。人材確保のため高額の報酬を支払う欧米型の手法が一部の日本企業にも浸透しつつある」とみている。 が、安倍政権による大企業優遇/労働者軽視、株価つり上げ政策/社会保障切り捨てが高額報酬に繋がっている面もあり、労働者賃金は生活を切り詰めざるを得ないほど低迷を続けている。

 空前の高水準が続く企業利益。 手許に溜め込んだ現金・預金(内部留保)の増加に比べれば賃金は減少、見劣りする。 家計の消費を増やし、経済の好循環を生むには、大幅な賃上げが必要だ。

  家計支出 3.9%減少

 総務省が発表した5月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は28万1307円となり、物価変動の影響を除いた実質ベースで前年同月比3.9%減少した。 4ヶ月連続のマイナスで、下落幅は2016年8月(4.6%減)以来、1年9ヶ月ぶりの大きさとなった。

 勤労世帯の実収入は1世帯(配偶者等家族含む)当たり43万9089円で実質0.3%減。 低賃金で働く世帯主の収入減が響いている。

  物価上昇 「困る」 8割   日銀生活意識調査

 日銀が発表した6月の「生活意識に関する意識調査」によると、物価上昇を「困ったこと」と答えた人が引き続き8割を占めた。
 1年前と比べた物価の実感について69.8%の人が「上がった」と答え、このうち物価上昇を「困ったことだ」と答えた人は79.4%。 「好ましいことだ」と答えた人は4.2%だった。

 日銀は年2%の物価上昇を目標に大規模な金融緩和政策を行ってきたが、国民の圧倒的多数は物価上昇を望んでいない。 日銀の政策・アベノミクスの政策(トリクルダウン理論)は、物価上昇以上の賃金上昇があって成り立つ政策であり、大企業がその儲けを賃金に還元せず、内部留保と役員報酬・株主配当にまわしている限り成功はない。

  日本の経済成長率1.0%に下方修正  IMF

 国際通貨基金(IMF)は7月16日、世界経済見通しを改定し、2018年の日本の成長率を1.0%(2019年は0.9%で据え置き)と、4月時点の予測から0.2ポイント引き下げた。
 世界全体では2018、2019年とも3.9%で据え置いたが、米中の「貿易戦争」など、「下向きリスクが一段と顕著になった」と分析している。

  大企業の内部留保  トヨタ自動車・初の20兆円超

 2017年度の大企業の内部留保(連結)は前年度比で額・率ともにアベノミクスが始まって以来もっとも大きく増えた。 第2次安倍政権が発足した2012年12月以降、毎年の決算期で大企業は内部留保を増やしてきたが、2017年度の増加額は最大のものとなった。

 内部留保が増大する要因は、安倍政権がすすめてきた大企業の減税だ。 企業が負担する法人税の税率を下げてきたほか、研究開発減税や設備投資減税、雇用拡大減税などの大企業優遇税制などだ。円安による収益増やアメリカのトランプ減税の影響も内部留保を増大する要因となった。

 内部留保が最大だったのはトヨタ自動車で20兆円の大台を超える20兆8921億円(前年度比1兆9020億円増)、次いで、三菱UFJFGの11兆7489億円(同5098億円増)、日本郵政の11兆742億円(同4725億円増)、NTTの10兆8392億円(同6486億円増)、本多技研の8兆7135億円(同7383億円増)とつづく。

 大企業の内部留保の総額は400兆円を超えるとみられる。 この10%を取り崩して国民に還元すれば2017年度税収(58兆円)の69%を賄える。 2018年度予算概算要求でみても一般会計予算の33.7%を占める社会保障費は総額で32兆8732億円であり125%賄えることになる。

 富の集中を大企業に偏るのではなく、大企業は応分の拠出をし、安心・安全な国民生活に寄与する義務を負うべきである。 国民あっての社会であるから・・・。