食費の切り詰め 限界に
可処分所得(実収入から税・社会保険料負担を除いた)は、30年前の水準まで減少。
テレビの街頭インタビューを聞いても、国民は経済の恩恵を感じていない。
エンゲル係数とは
エンゲル係数とは、家計の消費支出に占める食料品の割合のこと。
一般に、エンゲル係数の値が高いほど生活水準は低いとされる。これは、食料品(食糧・水など)は生命維持の関係から節約が困難とされるためである。
・ エンゲル係数(%)=食料品÷消費支出×100
消費支出 ― 可処分所得(実収入-税金・社会保険料=可処分所得)の中で、実際に使ったお金。食費、住居費、水道光熱費、医療費等。
消費税の導入は1989年4月(3%)。物価上昇は導入前年度比2.9%上昇したが、エンゲル係数は25.4%から0.1ポイント下降した。 要因は、食料品支出の伸び以上に消費支出全体が伸びたからだ。実質収入も現在より高かった。
消費税が3%から5%に引上げられた1997年度の物価も前年度比2.2%上昇したが、エンゲル係数は0.2ポイントの上昇にとどまった。
2014年4月の消費税引上げ(8%)では、エンゲル係数は0.7ポイント急上昇した
物価の上昇 減る実質収入
エンゲル係数の上昇幅が極端に大きくなった理由の1つは、異次元の金融緩和が物価を押し上げたことだ。
2つは、食料品支出がこれ以上削れない水準まできていることだ。
価格変動の影響を取り除いた“実質食料品支出”(月額)の推移は、89年85,608円であったものが、98年76,899円、14年67,778円と89年比8割程度まで食料品の購入量が減少してもエンゲル係数は上昇している。
3つは、実収入の減少だ。勤労者世帯の実質収入(月額)は、97年をピークに、14年は71,799円も減少している。
さらに、年金など社会保険料や税負担は高くなり、可処分所得は減少した。
支出は、食費以外を抑えざるを得なくなり、エンゲル係数は急上昇した。
エンゲル係数の急上昇 日本の家計はそろそろ限界か?
エンゲル係数の極端な上昇が示すものは、国民生活の危機だ。
総務省がまとめた昨年11月の家計調査における食料品支出は70,111円だ。支出総額は273,268円だったのでエンゲル係数を計算すると25.7%となる。
2013年まではエンゲル係数が25%を超える月はほとんどなかったが、2014年以降25%を超える月が増え始め、2015年になるとその傾向は顕著となり、5月以降は毎月25%を超えている。
食料品は、生命を維持するための最低水準だ。極端に節約できない。 生活が貧しくなると家計支出に占める食料品の割合が増加する。 エンゲル係数は生活水準を示す指標だ。
エンゲル係数の急上昇は、日本の家計が限界にきていることを示している。
子どもの貧困 早急な対策必要
エンゲル係数が上昇し続けている側面として、子供が貧困に陥っている
“子供の貧困は親の貧困” “親の雇用や所得対策に力を” “フードバンクの活動に支援を” “給付型奨学金の実現を” など、子供の貧困対策が早急な課題となっている。
「子どもの貧困対策推進議員連盟」が超党派の国会議員で発足し、“子供の貧困対策に関する諸問題の推進を図る”と確認した。
子供の貧困問題は切実だ。 貧困家庭の願いに正面から応える施策を早急に進めてもらいたい。