軽減税率 標準税率 加重税率
消費税を是とするか否とするかは別として消費税について考えてみた。
今年の漢字に『税』が選ばれた背景に、「消費税増税に伴い生活環境が大きく変化した」ことを反映したものだといわれる。
先進国の中でも消費税は定着している。しかし、日本のように一定税率ではない。国民生活に影響を及ぼす消費については、ほとんどの国で軽減税率を適用している。
総選挙においても軽減税率を唱えた政党があったが、中身は全くない。自公政権下で中身の議論もせず選挙スローガン的に出てきた。8%への増税時も議論してもらえず一律増税となったものだ。
選挙が終わり、来年度26年度税制改革論議が始まるが、財務省は絶対反対だ。あっても8%の一律税率は崩さず、10%への増税時に一部食料品などは8%に据え置く程度のものだ。これでは軽減税率ではない。
日本税理士会は、(税理士?)事務負担が煩雑であり、軽減税率反対を唱えている。財務省は、財政収入の増加に繋がらないと反対。その他、軽減税率は公平(一律的公平=水平的公平・・・金持ちも貧乏人も同じ税率負担でなければ不公平)に反すると反対の声も上がっているが、租税とは基本的に国民から巻き上げるものだ。租税負担に耐えられる人からその能力に応じて負担してもらうという『応能負担』(垂直的公平・・・累進課税)は租税原則から言えば当然の方法である。
一律税率で、税負担に耐えられない人には現金還付するなど愚の骨頂政策である。
消費税軽減税率は、庶民生活を守る・国内産業を守るという立場で、庶民生活・国内産業に影響をもたらさないよう政策的に考えるものだ。
仮に消費税率8%を標準税率とするならば、庶民家計・国内産業を圧迫しないよう基礎的食料品や農産物、生活必需品は0%~5%(軽減税率)。一般消費品目は5%~8%(標準税率)。贅沢品や高級品は20%~30%(加重税率)という考え方を持つことも一考に値しよう。
海外での「消費税軽減税率」模様
フランスの消費税軽減税率
軽減税率 | 対象品目 | |
19.6% | 7.0% | 旅客輸送、肥料、宿泊施設の利用、外食サービス等 |
5.5% | 書籍、食料品等 | |
2.1% | 新聞、雑誌、医療品等 | |
非課税 | 不動産取引、不動産賃貸、金融、医療、教育、郵便等 |
* 贅沢な食料品には標準税率を課す品目がある。
* 「世界三大珍味」(キャビア・フォアグラ・トリュフ)、日本では贅沢品となるが、キャビアは標準税率(19.6%)、
フォアグラ・トリュフは軽減税率(5.5%)である。フランスではキャビアは輸入品であり、フォアグラ・トリュフは国産である。国内産業を保護するための軽減税率だ。
また、マーガリン(19.6%)とバター(5.5%)にも異なる税率が適用されている。マーガリンは企業により生産されているが、バターは酪農家が生産しているため、国内畜産家を保護するための軽減税率だ。
チョコレート=形を変えると軽減税率。チョコレートは贅沢品とされ標準税率が課税されているが、カカオの含有量の少ない板チョコなどは軽減税率(5.5%)が税率適用される。
日本でも税率(酒税)の違い、第三のビールがもてはやされている。
イギリスの消費税軽減税率
軽減税率 | 対象品目 | |
20% | 7% | 家庭用燃料及び電力等 |
0% | 食料品、水道水、新聞雑誌、書籍、国内旅客輸送、医療品、居住用建物の建築、障害者用機器等 | |
非課税 | 土地・建物の譲渡・賃貸、金融、保険、医療、教育、郵便、福祉等 |
* イギリスでは同じ持ち帰り商品でも軽減税率を適用する食料品がある。温度の違いで設定され、温かい食料品(ファミレスのハンバーガーなど)には標準税率(20%)、冷たい食料品(スーパーのお惣菜など)には軽減税率(0%)が適用される。
* お菓子についても税率が異なる。アフターヌーンにビスケットやケーキを食べる文化がある。ケーキやビスケットは軽減税率(0%)、それ以外は標準税率(20%)だ。
居住用建物の建築に軽減税率(0%)が適用されているならば、日本の8%増税時に駆け込み需要などなく、その後の景気後退も避けられただろう。
カナダの消費税軽減税率
標準税率 | 軽減税率 | 対象品目 |
5% | 0% | 基本的な食材、農産品、処方箋薬、医療機器等 |
非課税 | 中古住宅、ヘルスケアや歯科治療サービスの大部分、子供ケアサービスの一部、教育サービス、金融サービス等 |
* カナダではドーナツに個数で軽減税率が適用される。ドーナツ5個で標準税率(5%)、6個で権限税率(0%)だ。その場で食べる飲食(外食)か、家庭で食べる食品かの判断だ。
軽減税率の設定品目は数多くあり、何に対して設定しているか各国の特徴が出ている。
国により様々な思惑があり、生活への影響を配慮するだけでなく、国内産業を保護する目的もある。しかるに日本は、生活への影響の国内産業への配慮も全くなく一律税率である。
日本の軽減税率・加重税率を考えてみた
標準税率 8% | 加重税率 | 対象品目 |
20~ 30% | 高級品、贅沢品、嗜好品 ・・・ (一定金額以上の貴金属・時計・自動車・衣料品 ・・・等) | |
軽減税率 | 対象品目 | |
0~ 5% | 基本的な食材・水道.光熱、農産品、新聞雑誌・書籍、国内旅客輸送、医療品・処方箋薬、医療機器等、居住用建物の建築、障害者用機器等 | |
非課税 | 土地・建物の譲渡・賃貸、金融、保険、医療、教育、郵便、福祉等 |
消費税率 4% でも EU並の国家収入
低所得者ほど負担が重くなる消費税を増税してよいのか ?
EU各国と比べて日本の消費税収入は低くないからくり !
消費税率を上げた財源が本当に社会保障に充てられるのか ?
「(増税前)日本の消費税は5%(国税4%)、国際的には低すぎる」「福祉先進国スウェーデンの5分の1、EU各国の4分の1」と言われるが、国税収入に占める割合をみると約22%と同程度である。
これは、日本の消費税の仕組みが、すべての消費に網羅的に一律税率で課税されているのに対し、EU各国の消費税(付加価値税)は、 *医療・教育から住宅取得・不動産・金融など幅広い非課税項目があるのに加え、 *食料品や医薬品など、生活必需品には軽減税率を適用しているためだ。
スウェーデンの国税収入に占める消費税収入の割合が22.1%で、日本は21.8%。 ・・・ では何故
スウェーデンに比べ社会保障の充実は日本がこれほど遅れ、低いのか ?
日本では、大企業・資産家への優遇税制、大型公共事業へのバラマキと税金の浪費、アメリカ軍への思いやり予算などの軍事費が多額にあるためだ。
この歳出・歳入の改革で7兆円以上の財源が確保できる。
これ以上消費税率を引き上げれば、世界でも『異常な国』になることはあきらかだ。
消費税増税 年収300万円未満では「死活問題」
年収300万円未満の家庭では、消費税が8%に増税されたことに伴い、家計の引き締めでやり繰りする世帯が62.7%。死活問題・かなり苦しい・やや苦しい家庭が80.7%に上っている。
消費税増税が貧困と格差を一層拡大していることがわかる。
日本の最低賃金は ?
世界で最低賃金制度を実施している国は日本をはじめ数多くある。
OECD資料(2013年)では、最低賃金オーストラリア(約1510円)、フランス(1167円)、カナダ(947円)、イギリス(916円)、日本は764円とオーストラリアの半分以下と低いことが分かる。
フルタイム労働者の平均賃金と比較しても日本は33.3%(調査27ヶ国中21番目)と3分の1以下で働かされている。
男女平等度でも日本は世界142ヶ国中104位であり、生涯派遣労働者をつくる「労働者派遣法」の改悪など、日本では働く労働環境がますます悪化している。