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   内部留保をはき出し、雇用と賃上げに

  国民の平均年収は減少し、貧困と格差はますます拡大している。1%の富者と99%の貧者とも言われている状況のもと消費税増税を強行すれば、消費税率を3%から5%へ引き上げた1997年より深刻な影響がでる恐れがある。景気も財政も共倒れし、社会保障の財源も生まれてこない。 ・・・ 大企業を中心とした景気対策減税と東京オリンピック誘致を口実とした莫大な公共事業費バラマキを行えば消費税増税分が社会保障費には回らず、国民犠牲の社会保障費削減を行っても日本の財政はますます超過債務となる。大企業の内部留保はますます拡大する。大企業は繁栄し、国(国民)は滅びる構図だ。

   人はゴミではない
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 かつて所得倍増計画を政策とした首相がいた。その後、高度経済成長の下「1億総中流時代」と言われた時があった。今や「1億総貧困時代」へ突入しようとしている。

 安倍首相は、「法人税減税を賃上げにつなげる」と言っているが、過去の法人税減税で賃金引き上げに回ったためしがない。内部留保の拡大や株主配当・役員報酬の引き上げにしか回らなかったのが実態である。

 大企業の労働者使い捨ては、「鮮度が落ちる」と長期非正規労働者を雇い止めにするなど、人をモノのように切り捨てる。非正規労働者の増大が賃金低下の原因であると政府も認めながら労働者派遣法を改悪しようとしている。大企業は労働者をさらに派遣へ置き換え、莫大な利益を追求。際限なき内部留保を追求している。
 内部留保をはき出し、雇用と賃上げに回すことが政府と大企業の緊急な責務である。

   「法人税減税を賃上げに」 は 空論

 安倍内閣は、法人税率の引き下げ・復興特別法人税の廃止で「賃金引き上げ効果」があるように宣伝しているが、根拠のない誇大広告である。過去、法人税減税を何度となくやってきたが、賃金は上がるどころか下がり続けてきたのが実態だ。一方、大企業の内部留保は増大しつづけ史上空前の金額に達している。法人税減税が賃金引き上げにつながるなど荒唐無稽の空理空論である。

 日経産業新聞が実施した「社長100人アンケート」によると、安倍政権が賃上げを要請しても「当面、賃上げには応じられない」が13%にも上っている。「賃上げを検討する」との回答はわずか2.7%にすぎない。
 経団連の米倉会長は、「雇用の規制改革を経た上でベア(賃上げ)の動きも出てくる」と労働者派遣法の改悪で“いつでも労働者の首が切れる条件”を整えろとしている。
 日本商工会議所の岡村会頭は、「企業収益が増えて初めて賃金が上がる」と賃上げは企業の利益次第だとしている。
 日本自動車工業会の豊田会長は、「企業の競争力を持続的に維持できるレベルでの賃上げ・・・」と賃上げよりも企業の競争力強化を優先している。

 労働組合のナショナルセンターを標榜している連合(主体は大企業の正規労働者で構成)は、来年は賃金引き上げを要求すると声高に表明したが、5年ぶりのベア要求であり、春闘(賃上げ闘争)を放棄した労働組合の声は力弱い。 ・・・ 正規労働者の賃金が引き上がれば、非正規労働者の賃金も引きあがる。との本音も見え隠れし、どこか、企業が儲かれば賃金に回るとの論理と似ている。

   雇用保険積立金・大企業の貪欲・負担引き下げ要求

 厚生労働省が発表した2012年度決算の雇用保険積立金残高は、過去最高の5兆9257億円に達した。
 積立金は景気が低迷していた2002年度には4064億円まで減少していた。その後10年、景気や雇用環境が改善したのか? 各種統計は労働者の賃金は下がり続け、非正規労働者を中心に雇用環境はますます悪化しているのに なぜ? である。

 雇用保険の財源は労使で折半する保険料と国庫負担から成り立つ。
 経済団体は、過去最高の雇用保険積立金にまで触手を伸ばし、2013年度は法律で認められている下限の1.0%をさらに引き下げるよう要求している。労働者の救済手段である雇用保険まで企業利益追求のため貪欲にも食い込んできている。

 雇用保険積立金がここまで積み立てられたのは景気回復・雇用環境の改善ではない。失業手当の給付条件・給付水準の引き下げである。
 若者を中心に失業手当を受給できるまで待機していたのでは、明日の生活費にも困る。どんな条件の悪いところでも働かなければ・・・ 失業手当より生活保護のほうが受給を受けやすい・・・ 就職することを諦めた・・・ との状況下、雇用保険には頼れないからだ。
 失業保険の給付条件・給付水準の引き下げこそが政治のとる道である。

   「ジニ係数」(貧困度)悪化 ・・・ 所得格差は過去最大

 ジニ係数とは所得格差(貧困度)を表す代表的な指数で、0~1の間で1に近いほど大きい格差を示す。厚生労働者が発表した所得分配に対する社会保障と税制の影響を調べる2011年所得再配分調査結果で、所得格差を示す『ジニ係数』を世帯単位で見ると、年金など社会保障給付を含まない当初所得は、前回2008年調査に比し0.0218ポイント増の0.5536と過去最大となった。
 今回調査は、岩手、宮城、福島を除く44都道府県で当初所得に社会保障給付を加え、税金と社会保険料を控除した再分配後の所得の『ジニ係数』でも0.0033ポイント増の0.3791ポイントとなった。
 低所得者に重い消費税増税が行われれば、さらに『ジニ係数』は悪化し、所得格差はますます悪化する。