還付申告のポイント
所得税の確定申告は、2月16日から3月15日とされていますが、確定申告義務のない還付申告(医療費控除・雑損控除・寄附金控除等があり、税金の還付がある場合)は、従来から1月1日より確定申告が受け付けられていました。 平成23年分の税制改正で還付申告の手続・範囲等改正されましたが、その改正部分をふくめ還付申告のポイントを整理しました。 |
Ⅰ 申告手続の改正点
① 公的年金の収入金額が400万円以下で、年金以外の所得の金額が20万円以下(例えば、
年金所得者が、85万円以下のパート収入を得ている)の場合は、確定申告が不要となりまし
た。
ただし、確定申告が不要とされただけで、税金が精算確定されたわけではありません。
多くの場合、払い過ぎのままとなっています(サラリーマンの年末調整前の状態)。
よって、申告しなければ税金が精算還付されない場合、申告しなければ控除されない社会保
険料や生命保険料、医療費や雑損・寄附金等がある場合は、還付申告をして税金を取り戻しま
しょう。
② 所得税の確定申告義務のある者は、従来2月16日からの受付となっていましたが、還付申
告となる場合は、1月1日より提出できることになりました。
Ⅱ 還付申告ができる期間
還付申告ができる期間は、その年分の翌年1月1日から5年間です。
確定申告を提出していなければ、5年分の還付申告を求めることができます。
確定申告をして税金を誤って過大申告している場合は、還付申告の手続はできません。「更正
の請求」という手続となります。
「更正の請求」ができる期間は、確定申告の提出期限から1年以内であったのが5年に改正さ
れました。22年分は24年3月15日までが更正の請求をできる期限となりますが、23年分は24
年3月16日から29年3月15日までの5年の期間内で更正の請求ができることになります。
なお、すでに更正の請求期限を過ぎてしまった年分についても国税庁は対応するとして手続き
を公表しました。3年以内のものは「更正の申出書」を提出すれば、税務署が職権で減額更正す
ることになります。詳しくはお尋ねください。
確定申告は、過大な税金とならないよう注意しましょう。
Ⅲ 還付申告ができる場合の具体例
① 給与所得者で、年の中途で退職し、年末調整を受けずに税金が納め過ぎとなっているとき。
② マイホームの取得などで、住宅ローンがあるとき。
③ 多額の医療費の支出があるとき。
④ 特定の寄付をしたとき。
⑤ 災害や盗難などで損害を受けたとき。
などです。
Ⅳ 還付申告ができない場合の具体例
源泉徴収された所得税があっても、源泉分離課税とされている所得税(銀行預金利子等に対す
る源泉所得税)については、確定申告により還付を受けることはできません。
Ⅴ 雑損控除
災害・盗難・横領により損害を受けた場合、雑損控除の対象となります。
雑損控除の対象となる損失の金額には、災害関連支出の金額も含まれますので、災害で直接受
けた損失のほかに、罹災した住宅、家財などの取壊し、除去の支出も含まれます。
東日本大震災により生じた損失については、雑損控除の特例があります。
Ⅵ 医療費控除
① 控除金額
医療費控除は、所得金額の5%か10万円のいずれか少ない金額を超える部分が医療費控除
の額となります
控除額の上限は200万円となっています。
② 控除対象者
還付申告者本人に限らず、生計を一緒にしている親族の医療費もまとめて対象となります。
③ 医療費の範囲
医療費の範囲は、治療や診療費、出産費用、医薬品代、通院交通費や入院費用(付添人など
の費用含む)などです。
美容整形費用、人間ドック費用(異常が発見され、その後治療に移行した場合は医療費控除
の対象となります)、健康増進薬、医師に対する謝礼金などは医療費控除の対象となりません。
Ⅶ 寄附金控除
特定の寄付をした場合、寄附金控除の対象となります。
特定寄附金とは、 ・国又は地方公共団体に対する寄附金 ・公益法人や公益を目的とする法
人又は団体に対する寄附金で、財務大臣が指定した寄附金(例えば、学校法人に対する寄附金)
・特定公益増進法人に対する寄附金(例えば、社会福祉法人に対する寄附金) ・特定公益信託
の信託財産とするためにした寄附金 ・政治活動に関する寄附金等です。
東日本大震災に関して支出した寄附金については、寄附金控除の特例があります。
Ⅷ 住宅借入金等特別控除
住宅借入金等特別控除、いわゆる「住宅ローン控除」は、納税額から直接差引く税額控除です。
大きな還付金額となりますので必ず還付申告をしましょう。
適用条件はいろいろありますので注意してください。
提出書類もたくさんありますので、事前に準備しておいてください。
エコポイントの扱いについては、当ホームページの税金ウォッチ28をご覧ください。
Ⅸ その他の還付申告
年末調整で申告漏れのあった控除は、確定申告で取り戻せます。
年金所得者の確定申告で控除漏れが多いのが「寡婦(夫)控除」と「(特別)障害者控除」で
す。
寡婦(夫)控除は以前、老年者でない者との適用条件でしたが、老年者控除の廃止に伴い、老
年者にも適用範囲は広がりました。従来どおりに適用を受けていない者が多くみられます。
寝たきりの人等を自宅で介護している場合(いわゆる老々介護など)は、障害者手帳の交付を
受けていなくても(特別)障害者控除の対象となりますので、しっかりと還付申告をしましょう。