ji20.jpg

    医療・介護「改革」案 ・・・ 厚生労働省

 厚生労働省は5月19日、政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅直人首相)に医療・介護「改革」の具体案を提示した。
医療では、現役世代3割負担となっている窓口負担を、さらに上乗せした受診時「定額負担」を求めている。
 定額負担の金額は明示していないが、1回当り100円~200円程度を見込んでいる。総額で数千億円の負担を患者に求めることになるとみられる。
 これは、医療の入り口で負担を重くし、医療診療を抑制する政策であり、患者切り捨て、国民の健康と安全を無視する考え方である。
病気になっても医者にかかれない。重い病気の患者、継続治療を必要とする患者、難病患者は治療を諦めるか、治療を中断しなければならない。

a0027_000071.jpg

 憲法25条は、「全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定している。 ・・・ 国は、全ての生活部面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上・増進に努めなければならない。 ・・・ と国家の義務を規定している。
 国民の健康・安全より、国は金のかかることはやらない。国が負担増となる方策はとらない。すべて受益者負担と国民・患者に負担増を押し付ける憲法違反の政策である。

 後期高齢者医療制度も同様である。
 高齢者の現代版「姥捨て山」といわれる現行制度を国民の批判を浴びても改善しようとせず、現在1割負担に凍結されている患者負担(70~74歳)を2割に引き上げて国の負担を減らそうとしている。

 介護分野でも介護保険料を支払う年齢(現在40歳以上)を35歳に引き下げる検討をしている。

    ― 何のために 税金を負担しているのか ―

  『税』と『社会保障』は表裏一体のものといわれる。
 13年前、福祉と税金研究でスウェーデンを訪問したことがある。
 スウェーデン国民から“国家は偉大なる父親である。・・・” との国民と国家との関係を説明された。
 国民は何のために税金を支払うのか? 何のために社会保険料を負担するのか? ・・・ 高齢者(60歳以上)になったとき安心して生活できる年金を受給できる。弱者(病気など)になったとき安心(負担なく)して治療を受けられる。子育ても、勉学も、雇用も安心して生活できることを国家に期待しているからである。

 1984年まで健康保険本人の患者負担は無料(現在3割負担)であった。
 「必要なときに医療を受けられない」不安を感じている人は74%(2010年1月、日本政策医療機構の世論調査)に達している。
 国民の健康と生命を脅かす政策を直ちに廃止し、憲法25条で保障している「生存権」の責任を果たすことこそ国家の使命であり、国民誰もが安心して暮らせる社会こそ社会保障本来の姿である。
 そうゆう国家でこそ私たちは安心して父親として信頼し、心から税金を納めるつづけることができる。

    政府、財務省、国税庁様

 税の専門家として一言申し上げたい !
 国税通則法改正(改悪)案で、納税者の権利を明記するのならば、納税者の義務も規定すべきだ、と猛烈な巻き返しをしてきましたね。
 その前提として憲法30条の「納税の義務」をよりどころにしていましたね。
 憲法は基本的に国家の義務を定めたものであり、国民の義務を定めたものではありません。
 憲法30条は「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。」と規定されています。
 憲法30条は国民の納税の義務を定めたものではなく、国民は法律に基づかなければ納税の義務を負わないという、国民の権利を定めたものであります。
言い換えれば、法律によってのみ国民に税を課すことができると、国家の義務を規定したものであります。

 憲法の理念は、政府(国家)の行為によって再び戦争の惨禍が起きないよう、 ・・・ 専制と隷従、圧迫と偏狭 ・・・ を除去しようと国家の義務を規定したものである。

 私たちは納税をごまかそうとしているものではありません。江戸時代の悪代官のような私勝手な徴税行政に反対しているのです。
 私たちの納めた税金は、私たちの安心・安全のために使ってほしいだけなのです。
納税者の権利ばかり保障し、義務を規定しなければ ・・・ との発想は、あなた方が国民のための税制を執行していないからで、国民の権利主張をおそれ、自らの権力姿勢を覆い隠すがための防衛規定だけではないでしょうか?
 国民を真綿で締めるような小手先の政策ばかりだから国民の批判を恐れているのではないでしょうか?
 「税と社会保障の一体改革」というならば、国民から「偉大なる父親である」と信頼されるような政策を行うことこそ、国民が安心して生活できる社会を構築する政策を打ち出すことこそあなた方の使命ではないでしょうか。