酷暑お見舞い申し上げます。
2025年も早8月に入りました。同業者の税理士から、「今年度の所得税改正にともないパートやアルバイトの収入をいくらまでなら増やしていいのかという質問が急に増え始めているが、改正が複雑で対応に苦慮している」との悩みが出されています。
配偶者控除適用の枠内に収まるようにパート収入などを調整している事例も多くあり、これから同じような質問をされる場合が出てくることが予想されます。
改正の施行と適用
まずは、改正を適用する流れです。
7年分以後の所得税・8年分以後の個人住民税から適用されます。ただし、改正法の施行は12月1日です。それまでは現行を継続し、年末調整で改正を織り込み、さらに月次の源泉徴収事務は8年1月1日から新源泉徴収税額表を適用して行うとされています。
このため、施行前に準確定申告書を提出した場合は、施行後に「更正の請求書」を提出して(5年以内可能)還付を受けることになります。また、施行前に出国により年末調整を行った場合は、確定申告で精算することになります。
つまり、いまのところ改正による「壁」の引上げはまったく実感できません。ですから、改正されたという情報を気をかけて手に入れていなければ、今年はそのまま流されてしまう公算が大きいのです。
そうすると、少しでも手取りを増やしたいと悩んでいる国民にとっては、早めに手を打つことができず、恩恵を受けられないことになります。
物価高にあえいでいる国民の切実な手取りの増加要求に、基礎控除等の引上げで政党間が合意して所得税を改正したのですから、政府を挙げてパート収入やアルバイト収入をここまでなら増やしても大丈夫だよという分かりやすいモデル例を示して広報を強化すべきですが、政府も国税庁も、単に改正内容を税法的に示すだけです。国民の苦悩ぶりは知ったことかと、なんとも情けない限りです。
こんなところにも、自公政権が支持を失う下地があるのだと思いますね。
「ここまで増やしても大丈夫」と確定額は言えない
さて、せっかく改正されたのですから、これから先の5カ月でパート勤務やアルバイトの勤務時間数を増やして、少しでも手取り額を増やせればいいわけです。
ところが、妻や子供の収入が増えたのはいいのですが、その人たちを配偶者控除や扶養控除の対象者としている納税者本人の税金計算で、二人とも適用外となり、世帯でみると手取り額が減少してしまうなんてこともありえます。しかも地方税の改正はありませんから、住民税への跳ね返りを考えると、上限額や有利不利の判定は簡単ではありません。許容額の見立ては一筋縄ではいかないのです。
会計事務所ですから、こちらが知りたい条件や金額をすべて提示していただけるのであれば、「ここまでの金額までなら収入を増やしてもこれまでと同じ扱いになりますよ。」とおおよその金額を伝えることはできます。
ただし、これから5か月間の状況変化を織り込むわけではありませんから、例えば、多額の譲渡所得が発生する場合などがありますから、示せるのは現時点での「目安額」でしかありません。
それでも時間がかかりますから、無料のサービスで目安額をお示しするわけにもいがず、かといって料金をいただくのも気が引け、会計事務所も大変困っているのです。
結局はアベ政治の尻ぬぐい
というわけで、自公政権を少数に追い込んで、所得税を改正させたのは国民の勝利といえますが、国民の懐具合を気にかけない政府の施策が間抜けなばかりに、結局効果は後追いで手間ばかりがかかる政策と評価されることになります。
昨年の「定額減税」もしかり。
手取りが増えない上に物価高騰。これは端的にいえばアベ政権がとんでもなく間違った金融政策をとり続けた結果「円安」を招いて物価高騰に至っていることがひとつ。もうひとつは、大企業の企業献金でウハウハしてきたアベ政権が、実質賃金据え置きを容認して企業の儲け本位政策を何十年にもわたり取り続けたこと。これが国民を追い込んでいるわけです。この根本を切り替えられない自公政権が自壊しつつある中での弥縫策がこれ。安倍政権のたまりにたまった「うみ」と「かさぶた」に、またまた国民が振り回され続けるというわけです。
税と向き合う会計事務所は、どこも怒りまくっておることをご承知おき願います。