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  支配の根幹は租税徴収

 現在の日本は民主憲法の下で民主国家だと認識されている。
 言葉のうえではそれを了解したとして、実態は富裕層や大企業の経済力による支配が厳然と作用している。
 政府は公選による人間が構成して運営するので、国民が国民を統治する形にはなっているが、公選も経済力が作用する結果富裕層が政府を構成する統治者となり、それ以外の国民は被治者となる。
 統治者は権力をもって被治者を支配する。つまり、富裕層による国民の支配である。
 支配の根幹は、暴力と財力による支配である。
 暴力は発動できる状態の維持で事足りる。
 財力は現実に使える財が確保されなければならない。統治者は自分の財を使う必要はない。一般民衆から収奪すればよい。
 支配の根幹は租税徴収なのである。
 かくして、民衆に対する人頭税として、生活必需品から日々収奪する消費税を基幹税制として、支配の根幹が貫徹されている。
 逆に言えば、統治者は税金を弄ぶことができる権力者だということでもある。

  物価高騰 なんとかしてくれ

 被治者にしてみれば、物価高騰で生活がままならないとき、税金で収奪されてはたまらない。税金を我々のために使え、とか、税金は納めないぞ、となり、社会は不安定になる。経済も停滞する。そうすると統治者にとって支配の根幹である租税徴収も怪しくなり、支配が貫徹できなくなる。そこで、民衆の怒りを抑える慰撫策を施すことになる。

  税金を戻す と 安直な施策

 令和6年6月に定額減税を行うという施策を打ち出した岸田政権は、「支配」という構造に基づいた動きをまるで絵に描いたように打ち出したわけだ。
 権力者が自由にもてあそぶことができる税金を使って、支配を貫徹するために所得税の減税を使ったというわけだ。
 一般民衆である国民は、支配という構造を守るという思惑があからさまに透けて見えるから、冷めた目で見ているのだ。
 物価高騰で苦しんでいるいま、国民を救いたいというのであれば、現金を即時に給付すればよい。1億人に一人3万円で3兆円。コロナ禍の補正予算では175兆円超を組んだこともあり、なんてことはない金額である。
 支配の根幹たる税金の弄びの魅力に取り込まれた知恵のない哀れな支配者。まわりに諫めるものもいないということなのだろう。

  本当に必要な人は 置いてきぼり

 さて、困窮している国民を救う定額減税の触れ込みだが、実は困窮している人は定額減税ではまったく恩恵を受けない。
 というのも、税金を返すという施策だから、税金がその額に満たなければお金が戻りようもない。
 本人に3万円、配偶者や扶養親族がいればその人数掛ける3万円を戻す。例えば本人と配偶者に扶養の子供が二人だとすれば、4×3万円で12万円以上の所得税を年間で納めていて初めてこの施策が満たされることになる。
 この人が年間5万円の所得税納税者だとすれば、7万円は戻ってこない。
 ひとり3万円というのは嘘だとなる。そこで何らかの給付を手当てするとしているが、具体策はまったく決まっていない。

 これ例はまだマシである。
 収入が少なくて、所得税も納付しなくてもよい人、住民税も非課税や均等割だけの人は、定額減税の枠外になる。つまり、真っ先に物価高騰に対して手を差し伸べられなければならない人たちの施策は、まったく決まっていない。
 給与受給者であれば、給与支払者がこのような対象者を把握することはできる。いうまでもなく大変な事務負担となるが。
 しかし、個人事業者で所得税の確定申告も不要である人たちを全数把握することは恐らくできないのではなかろうか。
 国税関係ではできないから地方自治体任せとなる。無責任そのもの。自治体もたまったものではないだろう。下図を見てください。クリックで拡大します。

 権力者が弄ぶことができる税金を使って、心がなく愚にも付かないかくもでたらめな施策が出され、国の施策なのに給与支給者や地方自治体に任せるというのだ。
 この施策によって、給与支払者や対応せざるを得ない機関や人々は、今年1年振り回される。さらに、来年の確定申告時期までひきずられる。
 安倍政権もひどかったが、岸田政権もひどいものだ。

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