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 サラリーマンの確定申告 ・・・ 年末調整

 サラリーマンは月々の源泉徴収と勤務先が代行する年末調整により税金の計算と納税手続が完了します。
 サラリーマンの確定申告ともいえるものが「年末調整」で、非常に大切な手続です。

1 年末調整が必要な理由
  年末調整が必要な主な理由は、①月々の源泉徴収税額は、年を通して給与支給額が変動しないものとして徴収しているが、実際は給与支給額が変動すること、②扶養家族等についても年の中途で異動があっても異動前の源泉徴収税額を修正しないこと、③配偶者特別控除や生命保険料・年金保険料・地震保険料などの各種控除は、年末調整の際に一括控除するなどの理由があげられます。
  この源泉徴収税額の不一致分を1年間の給与総額が確定する年末に精算する事を「年末調整」といいます。

2 年末調整の具体例 

 (Aさんの場合)

 ・給与の年間総額
                4,000,000円
・各月の源泉徴収税額の総計
                  76,080円
・給与天引き社会保険料
                  517,296円
○年初扶養控除等届出
  ⅰ控除対象配偶者あり
             (所得金額 0円)
  ⅱ扶養親族あり    (1人) 
    ●年末調整申告
 ⅰ一般の生命保険料支払額 105,000円
 ⅱ個人年金保険料支払額   120,000円
 ⅲ地震保険料支払額       45,000円
 ⅳ扶養親族である子(21才・学生)
           の国民年金保険料支払額
                    163,900円
 ⅴ年初扶養控除等届出の異動
           (本年12月第2子出生)
 

 年末調整結果
      給与所得控除(サラリーマンの必要経費)後の金額
          給与の年間総額 → 給与所得控除後の金額 2,660,000円
      社会保険料控除額(517,296+163,900)           681,196円
      生命保険料控除額(一般50,000+年金50,000)        100,000円
      地震保険料控除額                         45,000円
      配偶者控除・扶養控除および基礎控除額        1,770,000円
                    所得控除額合計         2,596,196円
      課税される所得金額(2,660,000-2,596,196)         63,000円
      税額(5%)                               3,100円
      年末調整還付金額(76,080-3,100)             △72,980円

3 年末調整で受けられる控除の種類
  税法上の各種所得控除については、確定申告でしか受けられない所得控除と、年末調整の際届出・申告することで受けられる所得控除があります。
① 年末調整(源泉徴収の段階)で受けられる所得控除
 ⅰ 社会保険料控除
 ⅱ 小規模企業共済掛金控除
 ⅲ 生命保険料控除
 ⅳ 地震保険料控除
 ⅴ 障害者控除
 ⅵ 寡婦(寡夫)控除
 ⅶ 勤労学生控除
 ⅷ 配偶者控除
 ⅸ 扶養控除
 ⅹ 配偶者特別控除
 11  基礎控除
 12  住宅借入金等特別控除(2年目以降分)
① 確定申告でしか受けられない所得控除
 ⅰ 雑損控除
 ⅱ 医療費控除
 ⅲ 寄付金控除
 ⅳ 配当控除
 ⅴ 住宅借入金等特別控除(初年度分)
 ⅵ 外国税額控除
 ⅶ 政党等寄付金特別控除
 ⅷ 住宅耐震改修特別控除
 ⅸ 住宅特定改修特別税額控除
 ⅹ 認定長期優良住宅新築等特別税額控除
 11 電子証明書等特別控除

 年末調整で、いかに損をしないか考えて見ましょう。
 年末調整の際(代行する勤務先に)提出する申告書は、以下2つの書類です。

● 「平成22年分給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」
 * 保険料控除申告書
保険料控除申告書には、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除があります。
 ・ 生命保険料控除には、一般の生命保険料控除と個人年金保険料控除があります。
  一般の生命保険料とは、通常の生命保険の契約に基づいて支払う保険料です。
  個人年金保険料とは、年金型で将来給付を受ける契約に基づいて支払う保険料です。
  区分は、保険料控除証明書に(一般)(年金)と表示して発行されています。
  それぞれ最高50,000円(合計100,000円)の控除額となります。
 ・ 地震保険料控除には、地震保険料控除と旧長期損害保険料控除があります。
  区分は、保険料控除証明書に(地震)(旧長期損害)と表示して発行されています。
  1つの保険料の中に地震と旧長期損害がセットになっているものもあります。
  地震保険料控除は最高50,000円、旧長期損害保険料控除最高15,000円です。
  ただし併せて最高50,000円が控除額となります。
 ・ 社会保険料控除には、給与から天引きされている健康保険料・厚生年金保険料等のほか、国民健康保険料・介護保険料・国民年金保険料・国民年基金保険料も該当します。
  控除額は支払った金額の全額が対象となります。
以上の保険料は、サラリーマン自身自分の分だけでなく、家族の分でも支払っていれば控除の対象となりますので、漏れなく見直しましょう。
  なお、保険料控除申告書の欄に「小規模企業共済等掛金控除」がありますので、該当する場合は申告してください。
 小規模企業共済等掛金控除は、控除証明書が発行されています。
 * 配偶者特別控除申告書
 配偶者の年間所得金額を正確に把握しましょう。
  パート・アルバイトをしている配偶者の場合、103万円を超える収入があっても1,409,999円以下の収入であれば配偶者控除に替えて配偶者特別控除受けることができます。
  配偶者特別控除の額は、収入金額に応じ最高380,000円から最低30,000円となります。
● 「平成22年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の訂正
平成22年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書はすでに勤務先に提出しておりますが、扶養家族等に異動があった場合は訂正の申告をします。
異動とは、本人、配偶者および扶養家族で出生・就職・結婚・死亡等があった場合です。
・ 22年の中途で、出生や就職していた子供の退職など扶養家族の数が増加した。
・ 22年の中途で、本人が障害者、寡婦(夫)または勤労学生に該当した。
・ 22年の中途で、控除対象配偶者や扶養家族が障害者に該当した。
・ 22年の中途で、配偶者と離婚や扶養家族が就職、結婚などで扶養家族の数が減少した。
などです。
 * 本人や配偶者控除、扶養控除には附属して様々な控除があります。
   ・ 配偶者控除・・・ 一般の配偶者控除
              老人である配偶者控除
              同居特別障害者である配偶者控除
              老人で同居特別障害者である配偶者控除
   ・ 扶養控除・・・  一般の扶養控除
              特定年齢者である扶養控除
              同居の老人である親の扶養控除
              同居の老人である親以外の扶養控除
              同居特別障害者である扶養控除
              特定年齢者である特別障害者の扶養控除
              同居の老人である親の特別障害者扶養控除
              同居の老人である親以外の特別障害者扶養控除
    <控除対象となる配偶者・扶養者は、年間所得金額が38万円以下の人となります>
    <22年の中途で配偶者や扶養家族が死亡した場合も控除の対象となります>
    <老人とは、年齢70歳以上(昭和16年1月1日以前に生まれ)の人が対象となります>
    <特定年齢とは、年齢16歳以上~23歳未満(昭和63年1月2日~平成7年1月1日の間の生まれ)の人が対象となります>
    それぞれの条件で控除額が違いますが最高980,000円、最低380,000円です。

 ここに注意 ・・・ 損をしないための年末調整申告

 扶養親族とは・・・ 6親等以内の血族と3親等以内の姻族とされています。
 控除の対象となる親族には、曾孫、姪、叔(伯)父、叔(伯)母(3親等)のさらに3つ先まで、配偶者の甥、姪まで対象となります。
 控除の対象とする親族は申告の際に選択できますので、家族で話し合って損をしないよう申告しましょう。
 ただし扶養しているとは、生計を一にしている(生活の面倒をみている)という事が条件ですので、同居していなくても控除対象として扶養親族の申告できます。
 同居を条件とされている控除もあります。
 同居とは・・・ 一つ屋根の下で生活するだけではなく、同一敷地内で別居していても食事等生活を一緒にしている場合も同居となります。
 また、病気などで入院している場合も同居に該当します。
 障害者とは・・・ 身体障害者および心身障害者と判定された人で、それぞれ福祉手帳等の交付を受けておりますので確認しましょう。
 福祉手帳等の交付を受けていなくても、申請中の場合や申請を受けられる程度の診断書があれば該当します。
 特別障害者とは・・・ 身体障害者手帳1・2級および精神障害者福祉手帳1級の人が該当します。
 また精神上の障害により事理を弁職する能力を欠く人、重度の知的障害のある人、病床に臥し複雑な介護を要する(寝たきりの家族を介護等)人も該当しますので主張していきましょう。
 寡婦とは・・・ 所得者本人で夫と死別した後婚姻していない人などをいいます。
 子供を扶養している寡婦の人は、離婚の場合でも該当(所得制限あり)します。
 子供を扶養している寡夫場合も寡夫控除(所得制限あり)があります。
 子供を扶養している寡婦の人は、特定寡婦控除として割増控除があります。
 老年者控除があった旧所得税法では、寡婦とは老年者ではない人と制限されていましたが、老年者控除が廃止された新所得税法ではこの規定の制限はなくなり、老年者でも寡婦控除の対象となりますので注意しましょう。 ・・・  年金受給者の場合など老年者の寡婦控除もれが数多く見受けられますが、税務署からの控除漏れ、税金還付の連絡はありません。

 税制は計算誤りでない限り、申告漏れ(控除漏れ)では払いすぎた税金を税務署は還付してくれません。
 控除を誤って(多く)申告した場合は、必ず追徴金を取り立てます。
 誤って年末調整の控除申告を多く申告した場合は、税務署は勤務先を通じて追徴金の取立て(年末調整の誤り補正)を行い、勤務先を通じて追徴金の納付(加算税・延滞税も課税される)をしなければなりません。
 損のないようにサラリーマンも税金(年末調整)に関心をもちましょう。

 確定申告をしないと損をするサラリーマンの税金は、2月1日号に掲載します。