申告水準の向上を図る? ― 何? ― 税金モット取れ?
税務署の人事異動は7月(7月10日)である。7月から新たな「令和元年・事務年度」が始まる。
新しい事務年度は税務職員にとって“自分の評価と希望が叶えられた人も、叶えられなかった人も”も新たなスタートである。 この世界で生きていく限り毎年繰り返される心機一転のスタートである。よくできた人事による職員支配の制度である。 来年こそは出世するぞ!・・・上司と権力(政治・官邸)に逆らうわけにはいかない。 国民の公僕、法令遵守など考える余地などない。 ひたすら自分の成績と上司への忖度である。
税務行政の基本(2本の柱)、「税務調査」と「滞納整理」に邁進し、成績を上げるしかない。
そこに「増差・件数」主義、違法・強権的な税務行政の温床がある。
国税庁長官が不祥事を起こし、空席であっても税務行政は何もなかったかのように進んでいく。
税務署は極めて強力な法執行機関である。 税務職員には、質問検査権や滞納処分に関する強大な権限が付与されている。 その権限行使に当たっては、より慎重にならなければならない。 人権侵害などあってはならないのである
「申告水準の向上」とは何なのか? 「事務運営に当っての基本的な考え方及び留意事項」にある。“調査と指導による申告水準の向上” “申告水準の向上及び納税意識の高揚を図る” その前提として ・適正・公正な課税を図るため・ ・適正な申告・納税義務の履行・ とある。
「適正」・「申告水準の向上」がことさら強調されている。
この発想(税務署の納税者を見る目)は、納税者すべて 『適正な申告をしていない(脱税している)』 だから、税務職員は『申告水準の向上(脱税逋脱)に』に努めよ! である。
税務調査の基礎知識
日本は法治国家である。 税務調査といえども法令に従って、人権を尊重し、民主的に行われるのが基本である。 絶大な権力を持つ税務調査(拒否権は認められない。黙秘権は認められない。帳簿書類等の検査権を持っている等々・・・)であればあるほどコンプライアンスは重要である。
「税務調査手続き」「税務調査の予見可能性」「納税者の人権と生活権を守る」ことは税務調査の基本である。
税務調査は一般的任意調査(犯罪捜査としての査察調査は別)です。
1、我が国の納税義務は、原則として納税者自らの申告により確定する申告納税方式です。
したがって、税務行政においては、この権利を崇高なものとして尊重しなければならない。
2、しかし、納税者が申告すべき税額を申告していない場合、税額等の計算が法律の規定に従っていない場合、 また、申告の内容が適法でない場合、あるいは、納税者が自ら確定した税額を納付していない場合 に税務調査の目的や対象になります。
3、税務調査は“狭義の行政指導”に属します。
憲法は、個人の尊重(13条)、法定手続の保障(31条)、令状主義(35条)、自白強要の禁止(38条)、・・・等、人権や財産権に対する保護規定を設けています。
したがって、行政上の必要(税務調査上必要)との理由だけで実力行使をすることはできません。
あくまでも『任意調査』であり、納税者の理解と協力、同意の下に行わなければならない行政調査です。調査官(税務署)の言うことを全て受忍しなければならないというものではありません。
4、税務調査には「質問検査権」があります。
納税者に対して、課税要件事実について質問し、納税者の支配に属する資料を検査する権限です。
課税要件事実についての質問であり、プライバシーに関する質問や検査はできません。
この質問検査権は、税務調査官の恣意・独断で行使されるものでもありません。必要最小限度の行使に止まらなければなりません。
『質問・検査の必要があり、かつ、これと相手側の私的衡量において、社会通念上相当の限度に止まるかぎり・・・』と判決も確定しています。(最高裁S48.7.10)
税務調査の円滑な執行は、税務調査官のコンプライアンス(法令遵守)と行政説明責任。
納税者の協力から成り立ちます。
税務調査官のコンプライアンス(法令遵守)と行政説明責任をしっかり求めていきましょう。
調査手続きの基礎知識
税務調査を実施するにあたり、以下の11項目について事前に納税者および税務代理人(税理士)に通知しなければならない とされています。(国税通則法および関連法規)
1、実地調査を行うという通知
2、調査対象者(納税者)の氏名・住所
3、調査担当者(税務調査官)の氏名・所属部署名等
4、調査の開始日時(調査日数ではない)
5、調査を行う場所
6、調査の対象税目
7、調査の目的
8、調査の対象期間(期分、年分)
9、調査対象となる帳簿書類その他の物件(法令による保存義務の有無)
10、調査日時・場所を変更する場合には協議する旨の税務調査官からの説明
11、非違が疑われた場合は、通知事項以外も調査できる旨の説明
また、実地調査中は、「調査の透明性、納税者の予見可能性を担保」し、 調査終了に当たっては、「調査内容の争点整理・調査結果の説明」等が税務調査官に義務付けられています。