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   消費税10%増税は中止、 国民生活第一の税制を

 安倍自公政権が狙う消費税の増税まであと5ヶ月を切った。
 国民生活は、2014年4月の消費税増税以来低迷を続けている。 日本の景気動向指数は「悪化」し、加えて、中国経済の減速や米中貿易摩擦に伴う世界経済の不安定化はますます激しさを増している。 この状況の中で消費税を10%に増税すれば国民の暮らしも日本の経済も破綻してしまう恐れがある。

 「消費税10%ストップ! ネットワーク」は「消費税10%・複数税率に反対する税理士の会」との共催で“消費税 いまあげるべきではない中央集会”を開催した。
 会見で呼びかけ人は、内閣府も景気悪化の可能性を否定できなくなり、今後も悪化が予想されると指摘。 “政府は増税ストップの判断をせざるを得ないところに追い込まれている。草に根から増税するな! の声を突き付ける意義は大きい”と述べた。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「不安出づる国、日本の消費税」と題する社説を載せている。 自民党は「消費税でくらしが変わります・・・」という資料を作成している。 “日出づる国・日本”でなく「不安出づる国・日本」。 「消費税でくらしが変わります。・・・」でなく「消費税でくらしが『悪く』変わります。・・・」 あってはならない消費税増税である。

   応能負担と 所得再配分こそ 税制の基本

 消費税導入<増税>は「社会保障の拡充のため」 「財政再建のため」とそのたびに言われてきた。しかし、消費税導入・増税後この30年間、社会保障も財政も悪化させてきた。

 消費税が導入された当時、国と地方を合わせた長期債務残高は246兆円、国内総生産(GDP)の比61%であった。 それが現在、長期債務残高は1000兆円を超え、GDP比190%にまで膨れ上がり、孫・子の世代に借金を付け回す状況にまで悪化させている。

 社会保障も悪化の連続だ。 厚生年金の支給年齢は60歳から65歳へ繰り延べられ、さらに70歳まで選択できるようにしようとしている。 マクロ経済スライドなる削減の仕組みがつくられた。 誰もが身をもって感じるサラリーマンの医療費窓口負担は1割から3割に引き上げられ、 定額800円だった高齢者医療費負担も1~3割に増加。 介護保険制度がつくられ、高額の介護保険料を取られるが、家庭内介護と称し、介護を受けられる保証は皆無に近い。 生活保護費も削減が繰り返されている。

 スペインの税と社会保障の関係は、「国家は偉大なる父親である」と国家を信頼し、税を負担することに全幅の信頼をおいている。 日本は真逆の国家である。

   悪魔の選択 ☛ 消費税増税 ・・・ なぜ? 繰り返し

 消費税法第1条に次の規定が追加されている。
 「消費税の収入については、 ・・・ 毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付金並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」
 消費税導入の原点は、直間比率の是正(法人税や所得税を引下げて、安定的な財源確保・間接税=課税ベースの広い消費税を創設)という経団連の強い要望で導入した。 その後、国民を説得するために「社会保障のため・・・」との口実をつけ現在に至っている税制である。

 消費税導入から30年、法人税の税率は42% ➔ 23.2%まで引き下げられ、所得税の最高税率(富裕層)は60% ➔ 45%まで引き下げられた。 ・・・ 当時私も講演で、『金持はベンツ1台の減税、貧乏人はラーメン1杯の減税』と揶揄していた。

 法人税収は18.4兆円 ➔ 10.3兆円に、 所得税収は26兆円 ➔ 17.6兆円に半減した。
 消費税収は4.5兆円 ➔ 17.2兆円と4倍近くまで増加した。 まさに国家税収の中心となった。
 この30年間の累計でも、消費税収0円 ➔ 372兆円増。 法人3税収は291兆円減。 所得.住民税収は270兆円減だ。

 消費税を10%、20%といくら増税しても法人税(大企業)や所得税(富裕層)の減収の穴埋めに消えてしまう。 社会保障の財源など生まれてこないことはこの30年間で知らされた。

 それでも政府はこの規程を理由に「消費税は社会保障と少子化対策に使っている」と強弁している。しかし、国民にその実感はない。 消費税収は法人税収より国家税収は高い。 消費税が導入する前は法人税、所得税等の税収で社会保障費を賄ってきた。

 実態は、消費税収は法人税・所得税減税に使われ、社会保障費充当の人質に使われている。 この路線を行けば国民は法人税収を社会保障費に充当されることなく、 “社会保障費を削減するか 消費税を増税するか” 『 悪 魔 の 選 択 』 に脅かされることになる。

 社会保障財源は、大企業や富裕層に応分の負担を求めること以外に解決策はない。
 富を大企業と富裕層に蓄積させるのではなく。 富は社会に還元させてこそ公正・公平な社会と平等・民主な社会が構築されるものだ。<所得の再分配>
 格差と貧困をなくし、国民が暮らしに希望を持てる税制を確立すべきだ。

 それこそが、 「応能負担」 と 「所得の再配分」 “税の集め方” と “税の使い方” の基本である。

   消費税を事業者が負担  “負担する事業者が悪い”

 消費税法第5条1に次の規定がある。
(納税義務者)
 「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある」

 消費税の納税義務者は『事業者』である。 消費者は納税義務者ではない。
 消費税法の本旨は、消費者が負担し、事業者が預かり、事業者が納税義務を負う。 と言いたいだろうが、事業者が消費税を消費者に転嫁できなければ結果、事業者が自腹を切って消費税を負担しなければならない。 消費税倒産の零細企業は後を絶たない。

 アンケート調査の実像がある。
 消費税率5%~8%へ増税された際、“消費税の全て、又は一部が転嫁できなかった”との回答が45.9%にも上る。 大規模事業者は消費税を転嫁できている。また、事業間取引でもほとんどが消費税を転嫁できていることを考えると、消費者相手の事業者の多くが消費税を転嫁できず、消費者に変わり消費税を自ら負担しているのが実態である。

 税務当局が強弁するように、消費税は消費者からの預り金であり、事業者は預かった消費税を単に納付するだけで自己負担しているものではない。それを滞納するなどとんでもない。 ・・・ そんな理屈は実態を知らないから言えることだ。

 中小企業庁等政府は当時、消費税の転嫁問題を調査したが、「請求しても増税分の消費税は支払ってもらえなかった」と 調査書にその旨回答したら、元請業者から呼び出され“チクッタロウ”と言われて仕事を貰えなくなったという業者まで出ていた。

 日本の消費税は弱者をより弱者へと追い込む究極の不公平税制であり、増税は中止すべきである。財源は、不公平税制を正し、応能負担<累進課税>に変えれば十分に保たれる。